研究課題/領域番号 |
16K07334
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
春田 奈美 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70381671)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | γ-チューブリン複合体 / 微小管 / c. elegans |
研究実績の概要 |
γ-チューブリン複合体は、微小管の末端に結合し微小管の形成を促進する。細胞周期が間期から分裂期になると、γ-チューブリン複合体は中心体に著しく集積し、微小管形成能の促進とともにスピンドルを形成する。 本研究では、γ-チューブリン複合体の制御メカニズムを明らかにするために、これまでγ-チューブリン複合体のコアサブユニットの一つであるGIP-1/GCP3のN末端に結合する小分子タンパク質MOZART1に注目し、線虫c. elegansを用いて解析してきた。申請者は、MOZART1とGIP-1/GCP3の相互作用がγ-チューブリン複合体の制御に関与することを明らかにするために、GIP-1/GCP3の各ドメインとMOZART1を融合させたタンパク質を線虫胚で網羅的に発現する系を確立し、内在性GIP-1/GCP3の存在下および非存在下での局在を解析した。その結果、GIP-1/GCP3のN末端領域とMOZART1の融合タンパク質は、内在性GIP-1/GCP3非存在下でも中心体PCMにリクルートされることが分かった。これは、GIP-1/GCP3のN末端領域とMOZART1の相互作用が、γ-チューブリン複合体の中心体へのリクルートに必要十分な条件であることを意味する。 さらに、γ-チューブリン複合体の環状複合体特異的因子の一つであるGTAP-1の変異体を作成し表現型を調べたところ、生殖腺での核および微小管の配向に大きな異常がみられ、結果として著しい配偶子数の現象が確認された。これは、GTAP-1が生殖腺においても、γ-チューブリン複合体の局在に必要であることを強く示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
γ-チューブリン複合体のリクルートのメカニズムと、MOZART1の役割はこれまで不明であったが、線虫を用いた in vivoの網羅的なドメイン解析と融合タンパク質の局在解析によって、中心体へリクルートされるための必要十分条件が明らかになったことは、大きな成果である。in vivoでの解析に必要な線虫株は全て樹立し、局在解析もほとんど完了している。 γ-チューブリン複合体の環状複合体特異的因子であるgtap-1の表現型解析も進み、もう一つの因子であるgtap-2については、現在、変異体株の取得を目指しているところである。 また、in vitroでのγ-チューブリン複合体の解析を効率よく進めるために、現在、複合体の各サブユニットを同時にバキュロ細胞に発現させるマMultiBacのシステムを構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
γ-チューブリン複合体の中心体へのリクルートには、ハエcentrosominの線虫の機能ホモログであるSPD-5が必要である。そのため、GIP-1/GCP3のN末端領域とMOZART1の複合体は、SPD-5と直接相互作用している可能性が高い。そこで、これまでに改良した三者および四者間の酵母ツーハイブリッド法を用いて、SPD-5の結合領域を同定する。 また、MultiBacを用いたバキュロウイルス発現系でγ-チューブリン複合体を精製する。さらに上記で同定したSPD-5の領域を加えて、γ-チューブリン複合体の会合状態に対する影響を調べる予定にしている。 さらに、γ-チューブリン複合体構成因子のgtap-2の変異体を取得し、その表現型解析も進めることで、細胞の種類依存できなγ-チューブリン複合体の局在化機構についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿費として考えていた予算だったが、年度内に間に合わなかった。関連論文を執筆して英語校正を終えたところで、その論文の投稿費として次年度に繰り越す予定にしている。
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