研究実績の概要 |
γ-チューブリン複合体(γTuC)は、γ-チューブリンと複数の構成因子が会合して環状の複合体を形成し、微小管形成能を獲得し、微小管の時空間的動態を制御する。我々は本申請研究を通じ、線虫C.elegansの新規構成因子であるGTAP-1, GTAP-2およびMOZART1について構成因子間の相互作用と役割を以下のように明らかにした。(1)MOZART1は、GIP-1/GCP3のN末端領域にのみ結合する。この結合が中心体へのγTuCのリクルートに必要十分条件であることが分かった。(2)酵母ツーハイブリッド法を改良し、複数の構成因子発現下での相互作用を網羅的に調べた。その結果、GTAP-1およびGTAP-2は、γTuCのコア因子であるGCP2/GIP-2と結合することが分かった。GTAP-2とGIP-1は、GIP-2と同じ部位で結合するのに対し、GTAP-1は異なる部位で結合することが示唆された。(3)gtap-1およびgtap-2のヌル変異体をCRISPR-Cas9法で作成し、表現型解析を行った。その結果、gtap-1変異体では、生殖腺膜上のγ-チューブリンの局在量が減少し、生殖腺の微小管形成に異常が生じた結果、産卵数も著しく減少していた。しかし、gtap-2変異体では、生殖腺への影響がみられなかった。 これらの結果は、GTAP-1とGTAP-2には明確な役割の差があることを意味する。初期胚におけるγTuCの中心体局在化には、GTAP-1とGTAP-2は同程度にγTuCの局在化に関与する一方、生殖腺ではGTAP-1のみがγTuCの微小管形成中心への局在化に必要である。これは、細胞の種類と時期特異的にγTuCの構成因子の種類と制御機構が異なることを強く示唆する結果であり、線虫のみならず、動物における組織特異的なγTuCによる微小管形成制御の分子基盤の理解にもつながる成果である。
|