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2016 年度 実施状況報告書

RhoGEF, Soloと中間径フィラメントを介するメカノシグナル伝達機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07335
研究機関東北大学

研究代表者

大橋 一正  東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10312539)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードRhoGEF / Solo / 中間径フィラメント / メカノシグナル / アクチン骨格
研究実績の概要

私たちはこれまでに、Soloが中間径フィラメントの一つであるケラチン8/18繊維と結合し、その結合がメカノストレス応答に寄与していることを明らかにしてきた。ケラチン繊維はデスモソームにおいてプラコグロビンやデスモプラキンによって、また、ヘミデスモソームおいてプレクチンによって細胞膜へ連結されており、これらの構造や分子を介したSoloの活性化機構と機能の解明を目的として研究を進めている。本年度は、イヌ腎上皮MDCK細胞の集団移動のモデルを構築し、Soloの発現抑制による効果を解析した。その結果、集団移動の移動速度がSoloの発現抑制によって上昇することが明らかとなった。細胞が集団を形成していない場合は細胞の移動速度は集団移動の場合よりも倍以上速く、その移動速度にSoloの発現抑制は影響しなかった。これらの結果から、細胞間接着部位にSoloを介して発生する張力が集団移動において個々の細胞のブレーキとして働くことが示唆された。これは細胞間接着部位からのケラチン繊維を介した張力の刺激がSoloを活性化することを示唆したため、ケラチン8/18繊維を細胞間接着部位へ連結させるプラコグロビンと関係を解析した。その結果、Soloの発現抑制によってプラコグロビンの細胞間接着部位における局在量が減少することが明らかとなった。また、ケラチン18の発現抑制によるケラチン8/18繊維ネットワークのかく乱はやはり集団移動を加速した。Soloは張力の刺激によるRhoAの活性化に寄与することをこれまでに明らかにしており、Soloがプラコグロビンの局在を制御する上流因子であると共にこれらの分子を介した張力によって活性化する下流分子である可能性も示唆された。そのため、Soloとプラコグロビンの結合を検討した結果、Soloとプラコグロビンが細胞内で結合していることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Soloの機能解析のために上皮細胞の集団移動をモデルに検討を行い、集団移動の速度の制御にSoloが重要であることを見出した。この分子メカニズムを解析するために、計画したデスモソームの構成蛋白質の一つであるプラコグロビンとSoloの関係を解析し、それらが細胞内で結合していることを見出している。さらに、Soloの活性化機構、局在に寄与する蛋白質を同定するためにSoloの結合蛋白質をビオチン化酵素を用いた新たなプロテオミクス解析方法で探索する準備を進めている。また、Soloの機能解析、シグナル伝達経路の解明のための強力なツールとして開発を計画している細胞間に作用する張力を可視化する高感度テンションセンサープローブの開発に着手した。デスモソームやヘミデスモソームにおいて細胞膜とケラチン繊維を連結するデスモプラキンやプレクチンをベースとしたテンションセンサープローブの開発を計画したが、細胞外にテンションセンサーユニットの円順列YFPを配置する必要があることが明らかとなったため、カドヘリンをベースとしたプローブの基本構造を作製した。今後のSoloの機能解析に寄与する準備が整いつつあり、概ね順調に計画は進んでいる。

今後の研究の推進方策

1.Soloと相互作用する蛋白質の網羅的探索
Soloと細胞内で相互作用し、Soloの局在、活性を制御する分子の探索を行うために、大腸菌由来のビオチン化酵素を用いたプロテオミクス解析を行う。これまでにプローブ分子を作製し、ヒト乳癌由来MCF7細胞を用いたプローブ分子の恒常発現細胞株の樹立を進めている。同定した蛋白質について、Soloの上流シグナルとの関連とメカノセンサー分子である可能性を検討する。
2.力負荷刺激によるSoloを介したメカノシグナル伝達経路の解析
細胞間接着からの張力がSoloを活性化し、細胞の集団移動に寄与することが示唆されたため、プラコグロビンを介した張力がSoloを活性化する可能性とSoloがプラコグロビンの局在を制御する可能性を想定してシグナル伝達経路の解析を行う。Soloの発現抑制によるRhoAの活性低下に対するプラコグロビンの過剰発現の効果とプラコグロビンの発現抑制によるSoloの活性変化をRhoA変異体を用いた活性型Soloのプルダウン実験を行い検討する。また、前項で同定されてくるSolo関連分子について同様の解析を行い、細胞間に作用する張力を感知するシグナル伝達機構を解明する。
3.テンションセンサープローブの開発
細胞間の張力を可視化するテンションセンサープローブのセンサーとして用いる円順列変異体YFPは、細胞内のpH変化などによって蛍光輝度が変化する可能性が示唆されたため、円順列変異体YFPを細胞外に配置することにした。そのため、E-カドヘリンをベースとして円順列変異体YFPを細胞外ドメインの細胞膜付近に配置する設計とし、これらの基本構造をこれまでに作製した。様々な円順列変異体YFPを組み込んだプローブを作製し、細胞間への張力の負荷、又は、ミオシンの阻害による張力の消失によって蛍光輝度の変化するテンションセンサープローブを作製する。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、上皮細胞の集団移動について解析を行うと共にプロテオミクス解析の準備、テンションセンサープローブの作製を進めてきた。その過程で、作製する組み換え遺伝子が予想より順調に作製できたこと、細胞観察が効率良く行えたため、消耗品にかかる費用、共通機器の顕微鏡の使用料が節約できた。H29年度は、プロテオミクス解析を行うこと、テンションセンサープローブの開発で試薬や共通機器の顕微鏡の使用料が多くかかると見込まれることから、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

H29年度は、プロテオミクス解析により多くの生化学実験を行うこととテンションセンサープローブの開発で共通機器の顕微鏡を使用する予定である。そのため、生化学実験に必要な試薬を購入する物品費として、また、共通機器の顕微鏡を使用する使用料として使用する計画である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Roles of the cytoskeleton, cell adhesion, and Rho signaling in mechanosensing and mechanotransduction.2017

    • 著者名/発表者名
      Ohashi, K., Fujiwara, S., and Mizuno, K.
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 161 ページ: 245-254

    • DOI

      10.1093/jb/mvw082

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Interplay between Solo and keratin filaments is crucial for force-induced stress fiber reinforcement.2016

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara, S., Ohashi, K., Mashiko, T., Kondo, H., and Mizuno, K
    • 雑誌名

      Mol. Biol. Cell

      巻: 27 ページ: 954-966

    • DOI

      10.1091/mbc.E15-06-0417

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Coordination of cellular dynamics contributes to tooth epithelium deformations.2016

    • 著者名/発表者名
      Morita, R., Kihara, M., Nakatsu, Y., Nomoto, Y., Ogawa, M., Ohashi, K., Mizuno, K., Tachikawa, T., Ishimoto, Y., Morishita, Y., and Tsuji, T.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0161336

    • 査読あり
  • [学会発表] Rho-GEF ‘Solo’ and Keratin Filaments Play Crucial Roles in Force-Induced Stress Fiber Formation2017

    • 著者名/発表者名
      Mizuno, K., Fujiwara, S., and Ohashi, K.
    • 学会等名
      新学術領域研究「動的秩序と機能」第5回国際シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学 数理科学研究棟 (東京都・目黒区)
    • 年月日
      2017-01-21 – 2017-01-22
    • 国際学会
  • [学会発表] 上皮官腔組織の形成制御におけるRho-GEF,Soloの役割2017

    • 著者名/発表者名
      西村 亮祐、大橋一正、藤原 佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      2017年生体運動研究合同班会議
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2017-01-06 – 2017-01-08
  • [学会発表] 動物細胞の力覚応答における細胞骨格の役割2016

    • 著者名/発表者名
      水野 健作、藤原 佐知子、大橋一正
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 国立大ホール(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
    • 招待講演
  • [学会発表] 力覚応答に関与するRho-GEF, Soloの上皮細胞の管腔形成における機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      大橋一正、西村 亮祐、藤原 佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 国立大ホール(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] The function of Solo, a Rho-GEF involved in mechanoresponse, in the ordering of epithelial cell populations2016

    • 著者名/発表者名
      Ohashi, K.
    • 学会等名
      5th Japanese-German University Presidents' Conference(日独6大学学長会議(HeKKSaGOn German-Japanese University Network)
    • 発表場所
      Karlsruhe Institute of Technology(ドイツ・カールスルーエ)
    • 年月日
      2016-09-29 – 2016-09-30
    • 国際学会
  • [学会発表] メカノストレス応答に関与するRho-GEF, Solo の上皮管腔組織形成における役割2016

    • 著者名/発表者名
      西村 亮祐、大橋一正、藤原 佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      第68回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府・京都市)
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17
  • [学会発表] 上皮細胞の力覚応答と細胞骨格制御に対するRho-GEF Solo の機能2016

    • 著者名/発表者名
      藤原 佐知子、大橋一正、水野 健作
    • 学会等名
      第68回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府・京都市)
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17
  • [学会発表] 上皮管腔組織形成におけるSolo の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      西村亮祐、大橋一正、藤原佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      日本生化学会東北支部第82回例会・シンポジウム
    • 発表場所
      弘前大学(青森県・弘前市)
    • 年月日
      2016-05-21 – 2016-05-22
  • [備考] 東北大学 大学院生命科学研究科 情報伝達分子解析分野 水野研究室

    • URL

      http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/

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公開日: 2018-01-16  

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