研究課題
これまでに申請者は、USP15がSart3を足場としてTUT1の脱ユビキチン化を促進すること、このメカニズムに異常が生じるとグローバルなRNAスプライシング異常につながることを見出していた。今年度は、USP15によるTUT1脱ユビキチン化の細胞内での生理的意義を中心に検証し、TUT1はK63連結型ユビキチン鎖修飾依存的に核小体に局在すること、USP15による脱ユビキチン化によって核質に移行することを新たに見出した。また脱ユビキチン化されたTUT1のヌクレオチド転移活性がUSP15による脱ユビキチン化によって増強することを明らかにした。一方、USP15KO MEFではTUT1の局在変化の影響が部分的であったことから、別の脱ユビキチン化酵素の影響が考えられた。そこでUSP15と相同性の高いUSP4の影響を調べたところ、USP15同様、TUT1の脱ユビキチン化を促進した。以上の結果から、USP15やUSP4によるTUT1脱ユビキチン化は、TUT1の核局在を変化させて、自身の活性を調節する役割があることが示唆された。次にUSP15-TUT1経路によって調節されるスプライシング標的分子を検証し、発達期シナプス形成に関与する標的候補分子の分子メカニズムを解析した。本課題では、同定した標的因子のうち、シナプス形成や神経-グリア相互作用に関与する細胞外因子に着目しており、Exon arrayの結果から、標的候補分子の新規スプライシング変異体の存在に辿り着いた。現在、スプライシング変異体がどの時期ならびに領域に発現しているのか検証している。
2: おおむね順調に進展している
USP15によるTUT1の細胞内での作用機序の制御メカニズム解析は、当初の予定通り、順調に進展している。USP15-TUT1経路の異常が何故グローバルなスプライシング変動につながるか、という分子メカニズムは、当初はnonsense-mediated mRNA decayの経路の関与を推測していたが、現在はU6-snRNAのpoly(U)付加に変化が生じ、U6-snRNA量に変化が生じる可能性を主に考えている。実際、USP15KOの組織から採取したtotal RNAを用いて解析すると、予備的ながら、U6-snRNA量に変化が生じることを見出している。これらの結果から、現在解析している作用機序は当初考えていたメカニズムとは異なり、U6-snRNA量を調節することで、正確なスプライシングに寄与しているのではないかと考えている。
USP15によるTUT1制御の分子メカニズムは、これまで同様、細胞やマウスを用いた解析を続けていく。今後の推進方策として、USP15の異常が、何故、運動障害や発達障害につながるのか、USP15の下流でスプライシング調節される標的分子を中心に検証する。特に、これら標的分子のスプライシング変異体が、脳内の特定の時期、領域に発現しているか、もし発現するなら、どのような機能変化が認められるか詳細な分子メカニズムを解析していく。
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