USP15は様々な基質を脱ユビキチン化し、ストレス応答や遺伝子発現、細胞周期など多彩な細胞現象を調節する酵素である。これまでに我々は、USP15の欠損がRNA代謝異常を引き起こすこと、それに付随して神経変性様の表現型につながることを見出してきた。本研究では、USP15の異常がどのようにしてこれら表現型につながるか明らかにすることを目的とした。 (1)USP15-TUT1 によるmRNA 代謝制御の分子メカニズム; 我々が見出したUSP15の標的候補因子TUT1がユビキチン修飾によってどのように制御されるか解析した結果、TUT1の脱ユビキチン化は核小体から核質への移行を誘導し、核質に存在するスプライソソームU6-snRNAの安定性を亢進することを見出した。 (2)USP15 欠損によって産生されたSparcl1 スプライシングバリアントの生理的役割; これまでに我々は、USP15異常によって分泌タンパク質Sparcl1の変異体が産生されることを見出している。本課題では、Sparcl1変異体の動態を解析したところ、細胞外に分泌されず小胞体に蓄積してしまい、正常な機能を発揮できなくなることを見出した。 以上、本研究課題で、USP15の標的因子TUT1の制御機構、またそれによって生じるSparcl1の細胞内現象を明らかにした。Sparcl1の異常は神経変性疾患とも関連があり、USP15の異常は小胞体ストレスの原因にもつながることから、当研究課題で見出した現象は、USP15の新たな分子メカニズムを明らかにするのみならず、RNA代謝異常から小胞体ストレスにつながるメカニズム、ひいてはこれらが神経変性の症状を惹起するメカニズムを新たに解明することができた。
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