真核細胞内における小胞輸送において、小胞体(ER)からの輸送小胞(COPII小胞)の形成は、小胞体出口部位(ER exit sites)と称されるサブコンパートメントで行われていると考えられており、このER exit sitesが受ける高度な制御によって輸送反応が時空間的に制御されている。このERにおけるER exit sitesの形成メカニズム、および輸送反応の時空間制御のメカニズムについて解析を行った。 平成30年度は、昨年度までに酵母two-hybrid法により同定したCOPIIサブユニットと相互作用することが示された脱リン酸化酵素について、COPII小胞形成反応への関与についてより具体的な解析を行った。その結果、同定した脱リン酸化酵素を欠損させた細胞内においては、そのターゲットとなるCOPIIサブユニットが小胞体膜に結合している割合が低くなることを見出した。このことから、同定した脱リン酸化酵素によるCOPIIサブユニットの脱リン酸化により、このCOPIIコートタンパク質の小胞体膜への結合を制御されていることが明らかとなった。 また、ER exit sitesの形成に深く関与することが示唆されている足場タンパク質Sec16について、顕微鏡下に形成させた人工脂質平面膜上に再現したCOPII小胞形成反応における動態を、昨年度までに最適化した条件を用いて解析したところ、COPIIコート、および積み荷タンパク質が形成するクラスター内には、Sar1のGTP加水分解依存的に取り込まれることが明らかとなった。
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