ユビキチン・プロテアソームシステムに欠損を示す新たな変異の取得を目指し1)アミノ酸アナログ感受性、2)26S プロテアソームによって分解されるモデル基質の分解遅延、3)既知の26S プロテアソーム変異との二重変異による合成増殖阻害、の3つの条件を満たす出芽酵母変異株のスクリーニングにより行なった。その結果、必須遺伝子TIF6 の変異株を単離した。Tif6 はリボソーム合成に必要な分子で、60S サブユニットの形成に関わると同時に80S リボソームを形成しても良いかどうかのチェックポイント機能も果たす分子である。Tif6 は保存性の高いタンパク質で哺乳類オーソログとしてeIF6 が存在する。Tif6/eIF6を調べてタンパク質合成とタンパク質分解という細胞内での2大イベントをつなぐ仕組みを明らかにすることが本申請課題の目的であった。 eIF6のノックダウン実験の結果、26Sプロテアソームの触媒サブユニットであるcore particle (CP)量の減少が見られた。さらにCPの形成に関わるシャペロン分子Ump1の蓄積と、CPを形成するβサブユニットの前駆体型が観察されることがわかった。これらのことはeIF6のノックダウンで CP形成のどこかが阻害されていることを示唆する。そして実際にeIF6のノックダウンでCPサブユニットを含み完全なCPより小さい分子量を持つCP形成中間体と思われるものが観察された。またeIF6 のノックダウンで見られるCP形成中間体と思われる構造体はCPサブユニットβ5をノックダウンした時の形成中間体と同じ分子量を示した。このことから、eIF6はβ5の組み込みに関わっていることが示唆された。一方ノックダウンに用いるsiRNAの配列によって表現型が異なる場合があることが判明し、eIF6とプロテアソームとの関係は異なる種類のデータで補強する必要がある。
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