研究課題/領域番号 |
16K07343
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
斉藤 美佳子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20291346)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | コンタクトアクティベーション / Cx30.3 / マウスES細胞 / 細胞間コミュニケーション |
研究実績の概要 |
マウスES細胞において、ギャップジャンクション構成タンパク質であるコネキシン群の網羅的解析により、Cx30.3が隣接する細胞間接触部位のみに速やかに発現することを見いだしており、Cx30.3はコンタクトアクティベーションの機能を有する分子であると考えられている。本研究は、このCx30.3タンパク質の新機能を明らかにすることにより、多細胞生物の多様な細胞間コミュニケーションの分子機構を解明することを目的としている。本年度は、Cx30.3のES細胞内発現動態の解析を行なうために、以下の2点を行った。
1.Cx30.3遺伝子のプロモーター領域の解析 データベースを元にES細胞からプロモーター領域と予想されるゲノムDNAを抽出し、EGFPをレポーターとするベクターを数種類作製した。それらのベクターをES細胞にトランスフェクションし定量PCR法によりEGFPのmRNA発現量を解析した。その結果、プロモーター活性を有する部位を決定することができた。 2.Cx30.3タンパク質の細胞接触に伴う空間的発現解析 Cx30.3とEGFPの融合タンパク質発現ベクターをES細胞へトランスフェクションし、Cx30.3-EGFP発現ES細胞を作製した。2個のCx30.3-EGFP発現ES細胞同士をマニピュレーターを用いて接触させたところ、速やかに接触点に向かって移動するEGFPの蛍光スポットが確認された。2個のCx30.3-EGFP発現ES細胞を一旦接触させたのち、細胞を強制的に離したところ、細胞接触面から速やかに遠ざかるEGFPの蛍光スポットが確認された。一方、Cx30.3-EGFP発現ES細胞と異種細胞であるHeLa細胞を接触させた場合は、それに伴う蛍光スポットの移動は全く観察されなかった。これらのことから、Cx30.3は同種のES細胞接触を認識しているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度の目的はCx30.3遺伝子のプロモーター領域の解析である。データベースを元に設計したDNAにEGFPをレポーターとするベクターを数種類作製した。ES細胞にトランスフェクションした細胞のEGFPのmRNA発現量の定量PCR解析により、プロモーター活性を有する部位を決定することができた。今後解析予定の転写因子の探索のためには、プロモーターの最小領域の決定が必要であるため、現在解析を進めている。 また、平成30年度に実施予定である、Cx30.3タンパク質の時空間的発現解析の予備実験として、Cx30.3タンパク質の細胞接触に伴う空間的発現解析を行い、Cx30.3タンパク質の新たな機能を有する可能性を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施予定であったCx30.3遺伝子のプロモーター解析について、概ねの領域を決定することができたが、転写因子探索のため、プロモーターの最小領域を決定する。 その結果を基に、Cx30.3遺伝子のプロモーターの最小領域に結合する転写因子を、ストレプトアビジンにビオチン標識したDNAを結合させた磁気ビーズを用いて探索する。 さらに、Cx30.3タンパク質の時空間的発現解析として、既にCx30.3タンパク質がES細胞同士の接触よりその接触部位に移動する様子を確認しているが、Cx30.3を発現した異種細胞および他のコネキシンが発現した異種細胞との接触応答についても解析を行う。
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