ギャップジャンクション構成タンパク質であるコネキシン群の網羅的解析の過程で、マウスES細胞ではCx30.3が隣接する細胞の細胞間接触部位のみに速やかに発現することを発見した。本研究は、Cx30.3の遺伝子およびタンパク質レベルでの発現機構解析を目的として実施し、以下の点を明らかにした。
細胞接触応答解析:データベースを元にES細胞からプロモーター領域と予想されるゲノムDNAを抽出して解析した結果、プロモーター活性を有する部位を決定することができた。細胞接触によってCx30.3のプロモーターを活性化する細胞内シグナリングについて解析した結果、LIFシグナルの関与だけではなく、E-カドヘリン―β-カテニンシグナル伝達系が大きな役割を担っていることを明らかにした。また、Cx30.3の発現は、異種細胞であるHeLa細胞あるいはメラノーマ細胞と接触させた場合では、mRNAの発現増加は認められず、細胞接触応答に特異性があることがわかった。 Cx30.3タンパク質の細胞接触に伴う空間的発現解析:Cx30.3とEGFPの融合タンパク質発現ES細胞を用い、単一の細胞同士をマニピュレーターを用いて接触させたところ、接触部位から離れて発現していたCx30.3が、速やかに接触点に向かって移動することが確認された。接触後に細胞を離すと、Cx30.3は速やかに接触部位から遠ざかった。この応答はHeLa細胞との接触では観察されなかったことから、Cx30.3は同種の細胞接触を認識しているのではないかと考えられた。 Cx30.3の新機能解析:ES細胞にCx30.3を過剰に発現させた細胞の増殖能を解析したところ、野生型の細胞と比較して有意に細胞増殖活性が上昇することがわかった。このことから、Cx30.3は細胞周期にも関与する新たな機能の発見につながる結果が得られた。
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