細胞内には様々な膜系オルガネラが存在し、それぞれ固有の機能を果たすことで恒常性が維持され、多様な細胞機能が発揮される。特にそれぞれのオルガネラには固有のホスファチジルイノシトールリン酸が局在化し、それぞれのオルガネラの同一性を確立しているという考え方が受け入れられつつある。その中でも特にホスファチジルイノシトール3リン酸は、哺乳類細胞ではエンドソーム、酵母細胞ではエンドソームおよび液胞に高度に濃縮しており、それらの機能の確立に重要な役割を担っていると考えられている。本研究では、ホスファチジルイノシトール3リン酸結合ドメインFYVEドメインを有する酵母のタンパク質Pib2に着目し、その機能解析を行った。Pib2はFYVEドメイン依存的に液胞膜上に局在し、さらにアミノ酸等の栄養に呼応して、細胞成長やオートファジーを制御するTORC1に結合し、TORC1を液胞膜へ繋留する役割を担っていた。Pib2は更に独立したもう一つのタンパク質複合体、GTR-EGOと並列にTORC1を液胞に繋留していた。Pib2はグルタミンの有無に応答して、TORC1を活性化し、実際Pib2を含む複合体とグルタミンの直接結合が見られた。しかしながら、Pib2をホスファチジルイノシトール3リン酸非依存的に液胞へ局在させても、その機能が果たされたことより、液胞上のホスファチジルイノシトール3リン酸の役割は、Pib2を繋留することでほぼ説明できた。
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