研究課題/領域番号 |
16K07351
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末次 京子 (塙京子) 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40391990)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂質膜 / 分泌小胞 / BARタンパク質 / 脂質膜切断 |
研究実績の概要 |
BAR (Bin-Amphyiphysin-Rvs161/167) タンパク質は脂質結合タンパク質である。BARタンパク質は脂質膜の表面でBARドメイン同士が規則正しく重合することにより、脂質膜をチューブ様構造に誘導することができる。BARタンパク質のサブファミリーの一つであり、細胞膜の突起構造を誘導するBARタンパク質は、ラメリポディアやフィロポディアに代表される細胞膜の突起構造形成に関与していることが知られている。本研究では細胞膜突起構造に関与するBARタンパク質は、これまで考えられてきたように単に脂質膜突起構造の誘導を行っているだけではなく、BARタンパク質により誘導された細胞膜突起を切断し、細胞外分泌小胞形成を誘導しているのではないかと考え、その仮説を検証することを目的としている。 平成28年度は脂質膜突起構造を誘導するBARファミリータンパク質遺伝子を、タンパク質発現系であるpGEX6pプラスミドにクローニングし、大腸菌による大量発現およびタンパク質精製を行うことが出来た。精製タンパク質を用いて、人工脂質膜との結合と脂質膜切断活性を調べたところ、これらのBARタンパク質は脂質と結合し脂質膜切断活性を持つことが示唆された。また、電子顕微鏡観察により、人工脂質膜がBARタンパク質により小胞化されていることも確認できた。さらにCRISPR/CAS9システムを用いて頭頸部がん細胞、グリオーマ腫瘍細胞、HeLa細胞の脂質膜突起構造を誘導するBAR遺伝子のノックアウト細胞を作製することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書の研究計画に通り、脂質膜突起誘導型BARタンパク質の大量発現系の構築、およびタンパク質の精製を順調に行うことが出来た。それらの試料を用いて、精製タンパク質と人工脂質膜との結合および脂質膜切断実験も行い、脂質膜突起誘導型BARタンパク質の脂質膜結合活性と脂質膜切断活性を確認することが出来た。 脂質膜突起誘導型BARタンパク質による人工脂質膜切断は、特定の脂質組成および脂肪酸の飽和度などが切断活性に影響を与えていることを示唆するデータが得られてきた。脂質膜突起誘導型BARタンパク質の変異体を用いて検証を行ったところ、一部のBARタンパク質が持つ両親媒へリックスは脂質切断に影響を与えていないことも明らかになった。 また、CRISPR/CAS9システムを用いて、新たに頭頸部がん細胞、グリオーマ腫瘍細胞、HeLa細胞のIRSp53ノックアウト細胞を作製することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、脂質膜突起誘導型BARタンパク質による脂質膜切断機構を分子レベルで明らかにするため、新たに作成した脂質膜突起誘導型BARタンパク質ノックアウト細胞を用いて、脂質膜突起誘導型BARタンパク質により細胞外分泌小胞形成が誘導されているかを検証する。そのため、脂質膜突起誘導型BARタンパク質のGFP融合タンパク質の発現プラスミドを作成し、ノックアウト細胞にトランスフェクションする。それらの細胞の培養上精を回収し、超遠心法により細胞外分泌小胞を精製し、そこに脂質膜突起誘導型BARタンパク質が含まれていないかをウエスタンブロッティングによって検出する。また、回収した細胞外分泌小胞はマススペクトル解析により調べる予定である。
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