研究課題
本研究はすべての細胞の位置と形が特定されているモデル生物線虫C.エレガンスを用いて,これまで不可能であったシングルセルレベルで生体分子の発現マッピングを行い,これまでほとんどわかっていない脂質などの生体分子の局在とその成立メカニズムを明らかにする.またその研究成果を発展させて,将来のヒトを用いた医学応用のための基礎技術の確立を目指す.本年度は研究の最終年度として,本研究の結果確定した固定法(30分程度のパラホルムアルデヒド(PFA)固定)で処理した線虫の凍結切片を用いて,TOF-SIMS法で線虫のイメージング解析を行った.10 keV Ar1000+をスパッタリングイオンビーム (TOF.SIMS5, ION-TOF GmbH) として、表面をクリーニングしたのち,60 keV の Bi3++ を一次イオンとして測定した.また,昨年度開発した測定データを主成分分析(PCA)で解析し,二次イオン像を融合させる方法によって,空間分解能の向上したイメージを得た.その結果,いくつかのアミノ酸由来と想定されるフラグメンイオンが,腸など特定の組織(細胞)に偏在していることが示された.このように本研究で当初予定していた通りシングルセルレベルでの生体分子イオン局在解析が可能になった. 一方で,線虫は微細であるため,生体分子が局在する細胞・組織の解剖学的位置をより明確にかつ迅速に確定するための基礎的な技術開発が必要であることも明らかになった.本研究の成果をもとに今後そのような方向に研究を発展させる予定である.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Scientific Report
巻: 8 ページ: 8392
10.1038/s41598-018-26694-w
生体の科学
巻: 69 ページ: 480-481