研究課題/領域番号 |
16K07357
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
後藤 奈緒美 (松元奈緒美) 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (80403971)
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研究分担者 |
中西 真弓 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (20270506)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リソソーム / V-ATPase / 破骨細胞 / Rab7 |
研究実績の概要 |
破骨細胞による骨吸収には、リソソームが細胞膜へ向かって移動して形質膜と融合することが必須である。しかし、分泌リソソームが細胞内を移動するメカニズムは不明な点が多い。 我々は、プロトンポンプである液胞型ATPase(V-ATPase)を欠損した破骨細胞では、リソソームの移動が起きないことを見出した。a3を欠損しても、ゴルジ体や初期エンドソームの局在、エンドサイトーシスには影響しなかった。また、小胞輸送因子であるRab7について調べたところ、a3を欠損した破骨細胞では、野生型のRab7だけではなく、常時活性型であるGTP型のRab7もリソソームへ局在しなかった。さらに、a3はGDP型のRab7と物理的に相互作用することも明らかにした。これらの結果は、a3がGDP型のRab7と相互作用することによりRab7をリソソームにリクルートし、その後リソソームの移動が開始されることを強く示唆している。また、GTP型のRab7がリソソームに局在するためにもa3が必須であったことから、Rab7がリソソームに安定に局在するためには、GTP型に変換されるだけではなく、a3の何らかの働きが必要である可能性が考えらえる。 破骨細胞のもつV-ATPaseのプロトンポンプとしての機能に関する研究も並行して進めた。分化に伴いV-ATPaseの発現量が増加することが知られているが、それは転写レベルの制御を受けていることを明らかにした。しかし、V-ATPaseの活性は上昇せず、その理由はV-ATPaseの複合体形成が不十分であることを示した。骨に接着したというシグナルが入ると、V-ATPaseが十分に会合し、骨吸収に必須なプロトンポンプとして機能することが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度から29年度は論文作成が主な研究となった。コントロール実験を増やしたり、再現性の確認を進め、様々なデータの定量を行った。その結果、予定よりも早く論文を投稿、受理してもらうことができた。 しかし、もう一方で予定していた酸性度に関する研究は、その予備的実験の結果をふまえた論文を提出、受理してもらえたものの、阻害剤などを使用した実験に関しては少し遅れているので、30年度は、そちらの実験に注力していきたい。 全体としては、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞におけるリソソームの移動にV-ATPaseが必須であることを明らかにしたが、この働きにV-ATPaseのプロトンポンプ機能(酸性化)が必要なのかを検証する。そのために、V-ATPaseの阻害剤を用いて、リソソームの局在変化、Rab7との結合、Rab7の活性化に影響について調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は論文の作成に集中し、予定していた酸性度に関する実験が十分に進められなかったため。その分30年度は実験を多く実施するため、当初の予定よりも研究費が必要であり、繰り越した助成金も有効に活用していく。
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