研究課題
破骨細胞が骨吸収を行うためには、細胞内のリソソームが形質膜へ向かって移動し、形質膜と融合する必要がある。昨年度までに、オルガネラなどの酸性化を担うプロトンポンプであるV-ATPaseが、リソソームの移動に不可欠であることを明らかにした。しかし、V-ATPaseの活性(酸性化)が移動に必要なのかは不明である。そこで今年度は、V-ATPaseの阻害剤であるバフィロマイシンがリソソームの移動に与える影響を調べた。破骨細胞をバフィロマイシンで処理したところ、リソソームの移動が起きなかった。また、リソソームの移動に関わる小胞輸送因子であるRab7のリソソームへの局在化も起きなくなった。Rab7はV-ATPaseと相互作用することでリソソームに局在し、その後、活性型のGTP型になると考えられるが、バフィロマイシン処理は、V-ATPaseとRab7の相互作用とには影響しなかった。GTP型となったRab7は、安定にリソソームへ局在すると考えられているが、バフィロマイシンで処理をすると、GTP型に固定されたRab7変異体でもリソソームへ局在できなくなることを見出した。つまり、V-ATPaseによる酸性環境の形成は、リソソームへ運ばれたRab7が安定にリソソーム膜へ局在するために重要だと考えられる。本研究課題によって、これまで不明であった分泌リソソームの移動について、分子メカニズムの一端を明らかにすることができた。これは、骨吸収の異常を原因とする大理石病や骨粗鬆症の新たな治療法開発につながる成果である。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 510 ページ: 421-426
10.1016/j.abb.2019.03.014.
Proceedings of the Japan Academy, Ser. B
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