研究課題
2019年度は,分裂酵母のGreatwall (Gwl)/alpha-Endosulfine (Ensa)/PP2A (Protein phosphatase type 2A)経路が,細胞周期から逸脱した静止期/G0期への進入と維持に果たす役割について,学術論文として公刊することに注力した (Aono et al., Genes Cells. 2019)。分裂酵母には,後生動物のGwl,出芽酵母のRim15と類似したキナーゼが3種(Cek1, Ppk18 およびPpk31),Ensa類似のMug134が存在することが報告されているが,これまでこれらの遺伝子の細胞の生存に関与する必須機能は報告されていなかった。本研究課題の進展によって,分裂酵母においてはGwl/Ensa経路はPP2A-B55活性の抑制を介して,増殖期から静止期/G0期への進入と,進入後の長期間にわたる生存率の維持に必須であることが示された。3種のGwl類似キナーゼのうち,Ppk18が主たる役割を果たし,Cek1が補完的な役割を担うと推測される。Ppk31については機能が不明であるが,ppk31+遺伝子のアンチセンス鎖が強く発現していることから,通常の増殖期やG0期では発現レベルが非常に低い可能性がある。また,申請者の主たる研究課題ではないが,出芽酵母や分裂酵母のGwlがエタノール発酵に関与することという共同研究の成果も公刊された(Watanabe et al., Appl Environ Microbiol. 2018)。細胞外栄養環境を受けてGwl経路がタンパク質分解系にどのような影響を及ぼすのかに関しては十分な理解に至っていない。静止期の生存維持におけるGwl経路の役割と,タンパク質分解系,特にプロテアソーム依存的タンパク質分解経路の制御との関係性は興味深い課題と言える。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Genes Cells
巻: 24 ページ: 172-186
10.1111/gtc.12665
Appl Environ Microbiol
巻: 85 ページ: e02083-18
10.1128/AEM.02083-18