研究課題
嗅覚受容体ファミリーは、系統学的に魚類から哺乳類に共通して存在するClass Iと陸棲動物特異的なClass IIの2つに分類される。1つの嗅神経細胞は、その分化過程においてClass IかClass IIかの二者択一的運命選択をおこない、その運命決定に従ってそれぞれの遺伝子レパートより1種類の嗅覚受容体のみを選択的に発現する。本研究課題では、嗅神経細胞の二者択一的運命選択の制御因子として同定した転写因子Bcl11bの作用機序の解明に取り組んだ。これまでに、Bcl11bがClass I型嗅覚受容体遺伝子のエンハンサー(J element)の活性を負に制御、Class I型嗅覚受容体の発現に抑制的に作用することを明らかにした。さらにClass IIエンハンサーであるP-elementの活性とBcl11bとの機能相関を解析し、Bcl11bが嗅神経細胞の二者択一的運命選択をエンハンサーレベルで制御することで嗅覚受容体のクラス選択を制御していることを明らかにした。以上の結果から、我々は嗅覚受容体遺伝子発現の新たなモデル、Class I嗅覚受容体デフォルトモデルを提唱する。すなわち、嗅神経細胞が発現するデフォルトの嗅覚受容体はClass I型であり、Bcl11bがJ elementのエンハンサー活性を負に制御し、Class I型嗅覚受容体の発現を抑制することによって、Class II型嗅覚受容体の発現が許容される。この機構は、水棲から陸棲への動物の進化における嗅覚系の陸棲適応時に獲得したものと考えられる。令和元年度は、これらの成果を国際会議における招待講演として発表した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
Communications Biology
巻: 2 ページ: -
10.1038/s42003-019-0536-x
https://www.titech.ac.jp/news/2019/044993.html
https://www.titech.ac.jp/news/2017/039272.html