研究実績の概要 |
Hoxa11/Hoxa13共通標的遺伝子群で、Hox13dKOで発現上昇する遺伝子にはAff3, Bnc1, Nfib, Runx1t1等転写因子をコードする遺伝子の出現頻度が高い。これらの遺伝子はE11.5軛脚間充織では発現するが、自脚間充織では発現しない。しかしE12.5では、自脚軟骨でこれらの遺伝子が発現することが判明した。Hox13dKOのE11.5自脚間充織ではこれらの遺伝子の異所的な発現が起きることから、Hox13は肢芽間充織からの自脚軟骨形成が所定の発生段階に到達するまで、一時的にこれら軟骨形成に関わる遺伝子の発現を抑制していると考えられる。Hoxa11/Hoxa13共通標的遺伝子であり、Hox13dKOでは自脚での発現が低下する転写因子Bcl11aについて、軟骨分化における機能を肢芽間充織高密度培養系における強制発現系により解析したところ、軟骨分化の抑制機能を持つことが判明した。これらからHoxa13は自脚間充織において、軟骨特異的に発現する転写因子群の発現抑制と、軟骨分化抑制因子の発現活性化により間充織から軟骨への分化を一時的に抑制しているものと考えられる。E11.5以降ではHox13の発現量低下や、未知の機構による機能低下もしくは機能変化により、未分化間充織の維持から軟骨への分化経路選択へとバランスが傾き、自脚軟骨形成が起きるのであろう。一方でHox13は、自脚間充織の増殖に必要なシグナル因子ShhやFgf10の発現活性化を行っていることが知られている。自脚はそれより基部側とは異なり団扇状に広がり、これにより5本の指形成に必要な間充織量が供給される。自脚特異的に発現するHoxa13は、一定期間自脚特異的な組織拡張を図り、この間自脚間充織から軟骨への分化を一時留保させることにより五本の指という自脚に固有な形態形成が実現化されるというモデルを提唱する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Hoxa13とHoxa11の共通標的遺伝子に着目したため、両者で共通していると予想される軟骨分化関連の遺伝子をピックアップすることに成功した。これらの遺伝子について、野生型胚肢芽およびHox13dKO胚肢芽における発現を解析したところ、研究実績の概要に記載したとおり、Hoxa13の自脚特異的形態形成における役割について新たな概念の提出に至った。(2)Hoxa11とHoxd11の機能欠失系統を作成し、Hox11dKOE11.5胚肢芽におけるAff3, Bcn1, Nfib, Runx11a, Bcl11a発現解析を行ったが、予想に反して変動は見られなかった。Hox11dKOの表現型はE13.5以降の軛脚軟骨で顕著になるため、Hox11によるこれらの遺伝子の発現制御は、E11.5の軛脚間充織ではなくE13.5以降の軟骨もしくは軟骨周辺組織で起きている可能性がある。Hox11dKOE13.5以降での発現解析を行うべく準備を行っている。(3)HBSCE欠失実験については、Bmp2, Tshz2, Aff3, Auts2, Mecomいずれの欠失ホモ個体でも表現型は観察されなかったので、肢芽における遺伝子発現の変化の解析を行った。Bmp2とTshz2については自脚間充織における発現の変化が観察され、HBSCEが自脚特異的なエンハンサー機能を持つことが示された。(4)Fgf10下流に存在するHBSCEの機能についてTgマウス系統を作製して解析したところ、E10.5以降での肢芽先端部エンハンサー活性を有することが判明した。エンハンサー活性とHoxの関連性を調べるために、Hox13dKOやHox11dKOバックグラウンドでの本レポータ-発現変化を解析すべく交配を行っている。
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