感覚器原基(耳、眼、鼻)が、共通原基である頭部外胚葉から特異化される機構の解明を目的に研究してきた。本研究では、転写制御因子群「SOX 転写因子とそのパートナー因子」の機能に着目した。 本年度は、内耳におけるSOX因子とSall4による協調的な転写制御の役割を明らかにするために、その標的配列の同定を試みた。In vivoで解析するために、DamID法をニワトリ胚を用いて行った。DamID法では、大腸菌のDam methylaseとSox2/9あるいはSall4の融合蛋白質を作製して、エンハンサーを用いて目的の組織(ここでは内耳)で特異的に発現させた。これまでニワトリ胚を用いた例はなく、条件等を試行錯誤した結果、Dam融合蛋白質による特定の配列をメチル化することを確認した。今後は、これらの配列のみをPCRを用いて特異的に増やすために、発現ベクターなどを取り除く作業が必要である。その方法を現在確立している。 またSOX因子とSall4の標的遺伝子を網羅的に同定する際に、内耳で発現している遺伝子の発現プロファイルを作製することも必要である。そのためにTRAP (Translating Ribosome Affinity Purification)法をニワトリ胚で行う。この際もエンハンサーを用いて内耳特異的に解析する。そのためのベクターの作製も完了した。 これまでに解析してきたエンハンサーを活用して、内耳特異的なSOX因子とSall4の協調的な転写制御の役割を明らかにできる基盤を確立することができた。この方法を他の感覚器原基にも応用して、頭部外胚葉から各感覚器原基が形成される仕組みを明らかにする。ニワトリ胚を用いることで、in vivoで、発生の現象を解析する。
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