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2016 年度 実施状況報告書

ポリコーム群PRC1複合体による着床前胚細胞運命と可塑性の制御

研究課題

研究課題/領域番号 16K07372
研究機関熊本大学

研究代表者

遠藤 充浩  熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員准教授 (40391883)

研究分担者 須田 年生  熊本大学, 国際先端医学研究機構, 卓越教授 (60118453)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード多能性幹細胞 / 生殖細胞 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / クロマチン / 転写因子 / 転写
研究実績の概要

異型ポリコム群のひとつPCGF6-PRC1複合体の生物活性や標的遺伝子の同定、および作用機構の解明を目指しました。まずPCGF6-PRC1複合体がマウスES細胞においてどのようなゲノム領域に結合するかを明らかにするため、ChIP-seq解析を行いました。その結果、従来型PRC1が強く結合する発生や分化に関わる遺伝子群には殆ど結合せず、生殖細胞に関連する遺伝子群に強く結合することが分かりました。次にPCGF6の機能を調べるために、Pcgf6遺伝子を欠損させたマウスES細胞を作成しました。その結果、Pcgf6遺伝子を欠損させるとこれら生殖細胞関連遺伝子が脱抑制し、ES細胞の増殖が阻害されることが分かりました。さらに、PCGF6が結合するDNA配列の特徴を調べたところ、bHLH型転写因子が結合する配列(Eボックス)が高頻度に含まれることが分かりました。PCGF6複合体にbHLH型転写因子MAX/MGAが含まれることから、我々はPCGF6複合体による標的遺伝子の認識にこれらの転写因子が関与する可能性を検証しました。その結果、ES細胞内でMAXまたはMGAの発現を低下させると、PCGF6の標的遺伝子への結合レベルが大きく低下することが分かりました。さらに、TetR-MAX融合タンパク質を人工的にTetO配列に結合させると、PRC1/PRC2によるヒストン修飾活性(H2AK119ub1および H3K27me3)が誘導されました。従って、PCGF6は転写因子MAX/MGAに依存して生殖細胞関連遺伝子を認識して結合し、ポリコーム型転写抑制ドメインを形成することが明らかになりました。またこのようなPCGF6-PRC1複合体による生殖細胞関連遺伝子の抑制は、ES細胞由来の始原生殖細胞様細胞(PGC-like cell: PGCLC)への分化や、マウスの正常な胚発生に寄与することも分かりました。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

異型ポリコーム群PCGF6-PRC1が、転写因子MAX/MGAに依存して生殖関連遺伝子へ結合し、ヒストンH2Aのモノユビキチン化修飾を介して転写抑制に寄与することを証明することに成功した。またPCGF6-PRC1がマウスES細胞の増殖および始原生殖細胞様細胞(PGC-like cell: PGCLC)への分化抑制に寄与すること、さらにマウス着床前後胚の正常な発生に必要であることも明らかにして、以上の成果をまとめた論文がeLife誌にアクセプトされた。

今後の研究の推進方策

(1)異型ポリコーム群PCGF6-PRC1の構成因子L3MBTL2の作用機序解明を目指す。具体的にはマウスES細胞のゲノム上におけるL3MBTL2の局在をChIP-seq解析を用いて明らかにする。またL3mbtl2コンディショナル欠損ES細胞の表現型(増殖・分化等)解析を行い、遺伝子発現様式およびクロマチン構造の変化を解析する(RNA-seq, ChIP-seq)。
(2)ポリコーム群PRC1とDNA損傷との関係を明らかにする。具体的にはRing1A/B欠損ES細胞、Pcgf6欠損ES細胞およびL3mbtl2欠損ES細胞において、活性酸素ストレス、DNA損傷応答の変化を測定する。またRNA-DNAハイブリッド構造(Rループ)を特異的抗体を用いて検出し、ポリコーム群による遺伝子発現制御との関係を追究する。
(3)ポリコーム群PRC1と細胞内代謝の関係を明らかにする。具体的にはRing1A/B欠損ES細胞、Pcgf6欠損ES細胞およびL3mbtl2欠損ES細胞におけるミトコンドリア活性や解糖系、脂肪酸酸化などの変化を解析する。

次年度使用額が生じた理由

PCGF6-PRC1による生殖細胞関連遺伝子の制御に関する研究成果を論文発表するために必要な実験を優先して、L3mbtl2コンディショナル欠損ES細胞のRNA-seq, ChIP-seq解析など、計画していた実験の一部を次年度に行うことにした。

次年度使用額の使用計画

L3mbtl2コンディショナル欠損ES細胞における遺伝子発現様式の変化を明らかにするためにRNA-seq解析を行う。またL3mbtl2欠損によるポリコーム群タンパク質の結合やヒストン修飾(H3K27me3やH3K27acなど)への影響を明らかにするためにChIP-seq解析も行う予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Cancer Science Institute of Singapore(シンガポール)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      Cancer Science Institute of Singapore
  • [雑誌論文] PCGF6-PRC1 suppresses premature differentiation of mouse embryonic stem cells by regulating germ cell-related genes2017

    • 著者名/発表者名
      Mitsuhiro Endoh, Takaho A Endo, Jun Shinga, Katsuhiko Hayashi, Anca Farcas, Kit-Wan Ma, Shinsuke Ito, Jafar Sharif, Tamie Endoh, Naoko Onaga, Manabu Nakayama, Tomoyuki Ishikura, Osamu Masui, Benedikt M Kessler, Toshio Suda, Osamu Ohara, Akihiko Okuda, Robert Klose, Haruhiko Koseki
    • 雑誌名

      eLIFE

      巻: 6 ページ: e21064

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.7554/eLife.21064

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Conversion of T cells to B cells by inactivation of polycomb-mediated epigenetic suppression of the B-lineage program2016

    • 著者名/発表者名
      Tomokatsu Ikawa, Kyoko Masuda, Takaho A. Endo, Mitsuhiro Endo, Kyoichi Isono, Yoko Koseki, Rinako Nakagawa, Kohei Kometani, Junichiro Takano, Yasutoshi Agata, Yoshimoto Katsura, Tomohiro Kurosaki, Miguel Vidal, Haruhiko Koseki, Hiroshi Kawamoto
    • 雑誌名

      Genes & Development

      巻: 30 ページ: 2475-2485

    • DOI

      10.1101/gad.290593.116

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ポリコーム群遺伝子Pcgf6による生殖細胞特異的遺伝子の発現および胚発生の制御2017

    • 著者名/発表者名
      遠藤 充浩
    • 学会等名
      千葉大学大学院医学研究院
    • 発表場所
      千葉大学大学院医学研究院
    • 年月日
      2017-03-31
    • 招待講演
  • [学会発表] ポリコーム群 PCGF6-PRC1複合体は生殖細胞系列遺伝子の抑制を介して胚性幹細胞の未熟な分化を抑制する2016

    • 著者名/発表者名
      遠藤 充浩、遠藤 高帆、林 克彦、須田 年生、古関 明彦
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-12-01

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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