研究課題
ナイーブ型多能性幹細胞におけるPCGF6複合体の精製を行った結果、構成因子としてRING1A/B, RYBP/YAF2, L3MBTL2などのクロマチン因子に加え、転写因子MGAを同定した。ナイーブ型多能性幹細胞においてPCGF6は減数分裂・生殖細胞関連遺伝子群の転写開始点周辺に結合することが分かった。またこれらのPCGF6標的遺伝子の配列にはEボックス配列が含まれ、転写因子MGA/MAXヘテロダイマーがこれを認識して結合し、PRC1.6複合体をリクルートすることが分かった。ナイーブ型多能性幹細胞でPCGF6を欠損させると、細胞の増殖及び生存が低下し、減数分裂・生殖細胞関連遺伝子群へのRING1B/RYBPの結合及びH2AK119ub1/H3K27me3修飾が消失して、これら遺伝子群が脱抑制した。さらに、これら遺伝子群の転写抑制は、RING1Bが媒介するH2AK119ub1修飾を介して起こることも分かった。一方プライム型の多能性幹細胞(エピブラスト幹細胞)では、PRC1.6複合体は減数分裂・生殖細胞関連遺伝子群へ結合せず、これら遺伝子群の抑制に寄与しないことが分かった。PCGF6欠損マウスは胚発生の過程で死亡する確率が野生型に比べて有意に高く、着床前胚から死亡し始めること、着床後胚の胎盤形成に異常があることも分かり、以上の研究成果を国際科学雑誌eLifeで発表した。以上に加え、PRC1.6複合体が転写因子をコードするDux遺伝子の直接転写抑制を介して、2細胞胚特異的遺伝子群の発現抑制に寄与することも分かった。PRC1.6複合体の標的遺伝子群はプライム型でフルにDNAメチル化され、ナイーブ型では不完全なDNAメチル化状態であることから、本研究は、この複合体が不完全なDNAメチル化を受ける遺伝子領域のEボックスに結合して、補完的に転写抑制を担う仕組みである可能性を示唆している。
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J Bone Miner Res.
巻: 33 ページ: 1785-1798
10.1002/jbmr.3477