研究課題/領域番号 |
16K07375
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
嶋村 健児 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70301140)
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研究分担者 |
畠山 淳 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (90404350)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / 分化制御 / 組織構築 / 脳 / 接着帯 / 領域性 |
研究実績の概要 |
幼若ニューロンのアピカル突起の保持・乖離機構を明らかにするため、細胞接着帯のダイナミクスを制御する低分子量Gタンパクの活性について検討を行った。前年度は、ニワトリ胚の脊髄を実験系としてRhoファミリーの操作を行ったが、神経分化、組織構築への有意な影響は認められなかったため、本年度は神経幹細胞の増殖と分化の領域差が著しいニワトリ胚の中脳をモデルに同様の解析を行った。内在性のRhoAの活性を負に制御するRnd3、およびドミナントネガティブ型のRhoA(DN-RhoA)をステージ15のニワトリ中脳の背側部にエレクトロポレーションにて導入し、2日後に幼若神経マーカーとチミジンアナログの取り込みを指標に新生ニューロンを定量した。その結果、いずれの操作によってもニューロン産生量に有意な変化は検出されず、また、組織学的な変化も認められなかった。この結果より、ニューロン産生のペースコントロールにはRhoファミリーの関与はないと結論した。この結果を受けて、アクトミオシンシステムによる突起先端の自切現象に焦点を切り替えて解析を行った。ミオシンの活性化を抑制すると、自切が阻害され、突起が保持されることから、ニューロン産生のペースが低下することが予想される。ミオシンのリン酸化を阻害するBlebbistatinを脳室内に投与し、ミオシンのリン酸化状態、アピカル突起の保持時間の変化を見るため、至適条件の検討を進めた。 一方、これらの解析に並行して、ニワトリ胚の脊髄にFGF8を過剰発現すると、翼板が菱脳の第Ⅳ脳室のような伸展した形状を呈するようになるという現象を受けて、これが第Ⅳ脳室の脈絡叢化している可能性について検討した。その結果、組織形状こそ第Ⅳ脳室様になるものの、TTR等の脈絡叢マーカーの発現は一切認められなかったことから、適切な脈絡叢形成には別の要因が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
RhoファミリーGタンパクによる接着帯ダイナミクスの制御が、アピカル突起の保持・乖離の最有力メカニズムであろうという当初の予測に固執したこと、それがことごとくネガティブであったこと、またその結論に至る実験結果の整理に予想外に時間がかかってしまったことが主な理由である。アクトミオシン系によるアピカル突起の自切について、文献的知見はあるものの、これまでの自身のデータでそれを支持するものがなかったことから、切り替えにやや消極的であったことも理由のひとつである。
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今後の研究の推進方策 |
時間と労力は要したものの、Rhoファミリーによる接着帯制御の関与の可能性を排除できたため、今後はアクトミオシン系によるアピカル突起先端の自切現象に集中して解析を行う。また、最近、幼若ニューロン、および中間前駆細胞に発現して、両者の脳室面からの離脱を促す作用を示す遺伝子が同定されており(私信、未発表データ)、共同研究も視野に入れつつ、この遺伝子に着目した解析にも早期に着手する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度(平成28年度)に熊本地震による実験計画の遅れから、多額の次年度繰越金が生じたが、本年度ではその分を消化しきれなかったことから、次年度使用額を生じた。しかしながら、本年度のペースで研究を遂行すれば、当初の配分額に加えて過不足なく使用可能である。
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