研究課題/領域番号 |
16K07376
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
梅園 良彦 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (20391881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FGFシグナル |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、安定したアッセイ系の確立に成功した。具体的には、アフリカツメガエル胚を活用し、アフリカツメガエル FGF受容体 (FGFR) のIgドメインをプラナリアFGFR(DjFGFR1およびDjFGFR2)およびキナーゼドメインを欠くプラナリア偽FGF受容体(NDK、NDL-2およびNDL-3)のIgドメインで入れ換えたキメラ受容体をコードするmRNAおよびDjfgf mRNAをアフリカツメガエル受精卵に顕微注入し、アニマルキャップを用いてFGFシグナルの標的遺伝子であるXbraの発現誘導能を定量RT-PCRにより解析することによって、それぞれの受容体のIgドメインとDjFGFとの相互作用の有無を検定するものである。想像を遥かに超える実験精度が必要であることがわかったが、技術補佐員の絶え間ない努力により、NDL-2のIgドメインはDjFGFと統計的に優位な相互作用を示すことがわかった。一方で、DjFGFR1、NDK、NDL-3は予想に反して相互作用を検出することはできなかった。さらには、共同研究によりリコンビナントDjFGFの大量精製に成功した。NDL-2キメラ受容体を用いてこのアッセイ系を活用すれば、リコンビナントDjFGFの活性の有無を容易に検定することが可能である。 次に、安定的にfeeding RNAiをおこなうために“Candi”法を新たに開発し、論文を発表した(Hattori et al., 2018)。 最後に、whole mount in situ hybridizationによりndl-2およびDjfgfの再生過程における発現解析をおこなった。その結果、Djfgfは、ndkおよびndk関連遺伝子同様に前方優位に発現すること、また、蛍光による1個体レベルでの発現定量解析法を開発することで、ndl-2は前後軸に沿って明瞭な発現勾配を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アッセイ系の構築には困難を極めたが、なんとか確立することができた。しかしながら、想像を遥かに超える実験精度が必要であったため、当初、予定のスケジュールで実験を進めることはできなかった。さらには、複数のcDNAソースを活用したにも関わらず、未だDjFGFR2の開始Metを含むcDNAをクローニングすることができていないため、この解析は最終年度におこなわざるを得なくなった。そのため、同様に技術補佐員を雇用し、安定した状態で解析を終了する予定である。 新規feeding RNAi法であるCandi法を開発したが、驚いたことに、この方法を用いてさえも、Djfgfを効果的にノックダウンすることはできず、その機能は未知のままとなった。この問題を解決するために、共同研究によりリコンビナントDjFGFの大量精製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、特にリコンビナントDjFGFを活用した機能獲得型の実験を積極的におこなう。これまでのプラナリア研究において、RNAiによる機能欠失型の実験は山のようにおこなわれ論文発表されているが、一方で、機能獲得型の実験はほぼ皆無である。これにより、解析手法の新境地を開拓できると期待している。この解析も含め、平成29年度以降の研究計画に従い実験を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
DjFGFR2の解析も含め、全体的に研究スケジュールが少し遅延しているため、本来使用するはずであった消耗品費の一部が残ってしまった。しかしながら、問題点はほぼ克服できていることから、最終年度で実験の遅れは取り戻すことが可能であると判断している。 使用計画としては、DjFGFR2のキメラ受容体をコードするcDNAの作製、これを用いてアフリカツメガエル胚によるDjFGFとの相互作用の有無を確立したアッセイ系により調べる。次年度使用額はこの実験に要する試薬などの消耗品費に充当する。
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