刺胞動物門ヒドロ虫綱に属するマミズクラゲは、淡水棲でありながらクラゲを放出する生物である。日本全国で夏場にマミズクラゲ成熟個体の発生が報道されるが、一つの池で一性別だけしか確認されないことが多く、その生物伝播や性決定に関して謎多き生物である。申請者は 8年前にマミズクラゲポリプを入手し、1個体から個体数を増やすことに成功し、さらに温度変化によるクラゲ芽形成の条件を確立した。そこで本研究では、実験室内で有性生殖世代を再現し(性成熟を引き起こし)、さらに核型解析による染色体情報やゲノム情報を得ることで、マミズクラゲにおける性決定が、遺伝的要因なのか環境的要因なのかの決着を付けることを目的として研究している。 2016年度はワムシを餌に用いた稚クラゲからの性成熟に挑戦した。その結果、ワムシを与える頻度や飼育の水深等を工夫することで、初めてメス池から採集したポリプから分化した幼クラゲの生殖腺が発達し、卵を持つ卵巣へと成熟した。 2017年度は オス池から採集したポリプから分化した幼クラゲをワムシを用いて飼育することにより、精子を持つ精巣が発生してくることを確認した。実験室での同一の環境、ワムシという同一の餌の条件下で、雌雄異なる性が発達したことから、マミズクラゲの性はポリプの世代ではすでに決まっている、つまり遺伝的要因である可能性が大きく示唆された。 2018年度は実験室内で性成熟させた個体や野外から採取してきた個体からの人工授精により、交雑株の樹立を試みた。卵割後、プラヌラ幼生からポリプへの飼育がとても難しかったが、2種類の交雑株を樹立することができた。また、メスの放卵の光条件がわかった。 2019年度は、受精時の温度を変えて、もう一度、交雑株樹立を試み、2種類の交雑株を得た。また卵巣、精巣で発現している遺伝子を網羅的に調べるため、ステージごとのRNAを回収した。
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