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2017 年度 実施状況報告書

母性効果因子によるRNA制御とリプログラミングに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K07383
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

品川 敏恵  国立研究開発法人理化学研究所, 眞貝細胞記憶研究室, 専任研究員 (70344041)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード母性効果因子 / Zar1 / Zar2 / RNA結合因子
研究実績の概要

受精からしばらくの間RNAの転写は起こらず、mRNA合成を阻害しても自律的に二細胞期へと発生が進行する。この間の胚発生は、受精前に卵子に蓄えられたRNAと蛋白質によって制御されていると考えられているが、その機構は良く分かっていない。卵子中の因子のうち、母方の遺伝子欠損のみで胚の初期発生に異常が見られるものは母性効果因子と呼ばれており、代表的母性効果因子であるzygote arrest 1 (Zar1) は、受精後の接合子ゲノム活性化に必要なRNA結合蛋白質で、Zar1を欠損した卵子は野生型の精子と受精しても発生が二細胞期で止まってしまう。Zar2 (Zar1-like) もZar1と同様にRNA結合因子で、アフリカツメガエルでは母性mRNA Wee1の3'側の非翻訳領域にある翻訳調節配列に結合し、翻訳調節を行っていると考えられているが、哺乳動物のWee1 mRNAにはこの翻訳調節配列に相同の配列が見当たらない。そこで哺乳動物のZar1/Zar2がどのような種類のRNA配列を認識し、どのような種類のRNAを標的として接合子ゲノム活性化を制御しているのか明らかにすることを目的とした。Zar1やZar2を過剰発現させたNIH3T3細胞の抽出液を用い、ショ糖密度勾配による分画や、RNA免疫沈降と次世代シークエンスを組み合わせたPAR-CLIP-sequenceを行うことにより、Zar1は主にmRNAの3'UTRに結合し、標的RNAには卵子の減数分裂に関わる因子が含まれていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

mRNAは転写後の翻訳制御の主要な場なので、Zar1やZar2がmRNAに結合するかどうか調べるためにHAタグ付きのZar1またはZar2をNIH3T3細胞に過剰発現させ、細胞抽出液からオリゴdT磁気ビーズを用いてmRNAに結合する蛋白質を回収し、ウエスタンブロットを行うことにより、Zar1とZar2はmRNAに結合していることが分かった。Zar1またはZar2を過剰発現させたNIH3T3細胞の抽出液をショ糖密度勾配により分画しZar1とZar2の分布を調べ、Zar1とZar2は主に翻訳制御に関わるポリリボソーム分画のmRNAに結合することが分かった。Zar1の局在は核外輸送阻害剤LMBによって核へ、RNAポリメラーゼIの転写ストレスを誘導するActDによって細胞質へと大きく変化したことから、Zar1はRNAの核内外への輸送に関わっている可能性が示唆された。
Zar1の標的RNAを同定するために、RNA免疫沈降と次世代シークエンスを組み合わせたPAR-CLIP-sequenceを行い、Zar1の結合部位の約60%はmRNAの3'UTRに存在し、標的RNAには卵子の減数分裂に関わる因子が含まれていることを明らかにした。

今後の研究の推進方策

Zar1/Zar2はリプログラミング因子Lin28と共にマウス受精卵の細胞質にあるP-bodyに存在すると報告されているが、Lin28はポリリボソームやストレス顆粒にも局在しうるので、局在場所を十分に特定出来ているとはいえない。そこでHAタグ付きのZar1/Zar2を線維芽細胞に発現させ、免疫染色して、細胞内のどこにZar1/Zar2が分布するのか、P-bodyやストレス顆粒のマーカーと比較する。また、Zar1はES細胞で発現が認められるので、Zar1をノックダウンして、P-bodyやストレス顆粒のマーカーの局在の変化を調べる。iPS細胞誘導系にZar1/Zar2を加えてiPS細胞誘導効率が上昇するかどうか調べることにより、核のリプログラミングへの関与を探る。

次年度使用額が生じた理由

標的RNAの安定性をEUのパルスラベルをおこなって調べる予定だったが、Zar1の局在がEU添加で大きく変化することが分かり、中止せざるを得なくなったため。残余分は母性効果因子Zar1/Zar2とリプログラミングの関係性の調査に使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Structural analyses of the nucleosome complexes with human testis-specific histone variants, hTh2a and hTh2b2017

    • 著者名/発表者名
      Padavattan Sivaraman、Thiruselvam Viswanathan、Shinagawa Toshie、Hasegawa Kazuya、Kumasaka Takashi、Ishii Shunsuke、Kumarevel Thirumananseri
    • 雑誌名

      Biophys Chem

      巻: 221 ページ: 41~48

    • DOI

      10.1016/j.bpc.2016.11.013

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 高齢マウスにおける精原幹細胞維持にヒストンバリアントTH2AとTH2Bが貢献している2017

    • 著者名/発表者名
      品川 敏恵、My Linh HUYNH、石井 俊輔
    • 学会等名
      第160回日本獣医学会学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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