研究課題/領域番号 |
16K07386
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
和田 浩則 北里大学, 一般教育部, 准教授 (70322708)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 側線神経 / 感丘 / 有毛細胞 / プラコード / 神経堤細胞 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
魚類の側線感覚器(感丘)は、神経プラコード由来の有毛細胞が、皮膚中の様々な組織に取り囲まれて存在している。これらの感丘の形成には組織間相互作用が重要な役割を担うと考えられる。前年度、まず、頭部にある感丘の発生過程を記載し、それぞれの感丘と周辺組織との位置関係を明らかにした。次に、hyosympleticプラコード由来の2つの感丘(Hm1, Hm2)が、軟骨組織に付随していること、また、これらの感丘形成にはWnt activatorであるrspo2遺伝子が必要であることを示した。 当該年度において、まずはじめに、rspo2遺伝子が感丘以外の組織の発生に寄与するかどうかを調べた。(1)Alucian blueによる軟骨組織の染色(2)Calceinによる硬骨組織の染色(3)tubulin抗体染色による神経組織の染色を行ったが、いずれも異常は見られなかった。次に、rspo2が軟骨組織で働いていることを示す実験を行った。まず、鰓弓に発現する遺伝子の発現を解析し、rspo2発現細胞は、dlx2の発現する神経堤由来細胞に隣接して、すぐ腹側に存在することから、第2鰓弓(hyoid)に相当すると考えられた。つぎに、rspo2遺伝子にgal4遺伝子がトラップしたエンハンサートラップ系統を用い、Wnt inhibitorであるdkk1aを異所的に発現した。その結果、2つの感丘(Hm,1 Hm2)が特異的に欠損し、rspo2突然変異体と全く同じ表現型を示した。これらの結果から、第2鰓弓由来の軟骨(またはその前駆体)がRspo2を分泌し、隣接する感丘前駆細胞のWnt signalを活性化することにより、2つの感丘を形成することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、ゲノム編集法などの分子生物学的手法で解析(例えば新たな突然変異体の作成)を進める予定であったが、現時点では、ゼブラフィッシュの飼育スペースの問題で遂行が難しい。そのため、主として、組織学・細胞生物学的手法によって解析を進めた。頭部側線神経系の発生を記載する過程で、鰓弓(軟骨)と感丘の関係を見出し、その相互作用に焦点を当て解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
頭部側線神経系の発生を記載する過程で、軟骨ではなく硬骨に隣接する感丘も存在することが分かった。OP1と呼ばれる感丘は、鰓蓋骨の骨芽細胞に隣接して生じる。感丘組織と骨芽細胞を同時に蛍光標識することによって、これらの形成過程の解析を進める。次に、感丘前駆細胞と軟骨細胞や骨芽細胞が、同じパターン形成遺伝子によって制御されている可能性を検討する。さらに、発生後期において新たに形成される感丘について、その由来と、隣接する組織の同定を進め、感丘形成に関する普遍的な発生メカニズムの解析に結びつける。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゼブラフィッシュ飼育スペースが限られているため、遺伝子操作等での突然変異体やトランスジェニック系統の作成などの実験を行わなかった。今後、分子生物学的手法を用いた実験を行い、必要な試薬や抗体等の購入に使用する。
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