感覚器の分布は、外部からの刺激を効率よく受容する上で、重要である。例えば、ヒトの舌には特定の味覚を感じる味蕾が決まった位置に分布している。「決まった位置に決まった感覚器をつくる仕組み」はよく分かっていない。そこで、魚類の側線器官をモデルにこの問題にアプローチした。魚類の機械刺激受容体である側線器官(感丘、neuromast)は、体幹部と頭部に決まったパターンで分布しているが、発生過程でどのようにその場所が決定されるのか分かっていない。 本研究で、我々はゼブラフィッシュの頭部の側線システム(ALL)の発生を解析した。ALLを構成する感丘は、以下の4つのメカニズムによって決まった場所に形成される。(1)移動しない側線原基の増殖と分化、(2)移動する側線原基の増殖と分化、(3)すでに分化した感丘をつなぐ前駆細胞の増殖と分化、(4)側線原基の出芽。さらに、我々は、Wntシグナル活性化因子であるR-spondin2 (Rspo2)が、舌顎骨(Hyomandibular cartilage)に隣接する決まった感丘の増殖と分化に必要であることを見出した。遺伝学的な解析から、Rspo2は、第2鰓弓(舌弓)由来の間葉細胞(神経堤由来)から分泌され、隣接する側線原基の前駆細胞の増殖を制御することを明らかにした。 感丘が組織間相互作用によって、決まった位置に作られる新しいメカニズムを明らかにした。この結果は、脊椎動物の頭部の発生と進化に重要な示唆を与える。(論文投稿中)
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