研究課題/領域番号 |
16K07387
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
尾之内 均 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (50322839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | uORF / 翻訳アレスト / リボソーム / 新生ペプチド / 翻訳制御 |
研究実績の概要 |
(1) 試験管内翻訳系において翻訳アレストを起こすuORFペプチドの探索 被子植物において翻訳制御に関与するペプチドをコードする新規のuORFを同定する目的で、進化的に保存されたアミノ酸配列を持つuORF (conserved peptide uORF: CPuORF)のうちの未解析のものの中から、試験管内翻訳系においてペプチド配列依存的にリボソームの停滞(翻訳アレスト)を引き起こすものを探索した。uORFペプチドによって翻訳アレストが引き起きた場合は、翻訳が正常に完了せずにペプチドとtRNAが解離しないと考えられる。試験管内で翻訳した際にペプチジルtRNAの蓄積がみられるCPuORF をウエスタン解析により探索したところ、ペプチド配列依存的に翻訳アレストを起こす新規のCPuORFが3つ同定された。さらに、CPuORFの終止コドンの位置を変えた変異体を用いたウエスタン解析およびトープリント解析により、それらの3つのCPuORFのうちの2つは翻訳伸長過程で翻訳アレストを起こし、他の1つは翻訳終結過程で翻訳アレストを起こすことが明らかになった。また、シロイヌナズナ培養細胞から調製したプロトプラストを用いた一過的発現解析により、それらのCPuORFがペプチド配列依存的に下流の主要ORFの翻訳を抑制することを見いだした。
(2) uORFペプチドが関与する遺伝子発現制御機構の解析 これまでに見いだした翻訳制御に関与するCPuORFについて、制御機構を遺伝学的に解析するために、その準備として変異の影響をモニターするためのレポーター遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナを作出した。そのために、それぞれの遺伝子のCPuORF を含む5′ 非翻訳領域に様々な変異を導入し、その下流にルシフェラーゼ遺伝子をつないでシロイヌナズナに導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、試験管内翻訳系において翻訳アレストを引き起こすCPuORFを探索し、ペプチド配列依存的に翻訳アレストを起こすCPuORFを新規に3つ同定することができた。さらに、それらのCPuORFにおける翻訳アレストの位置を決定し、3つのCPuORFのうちの2つは翻訳伸長過程で翻訳アレストを起こし、他の1つは翻訳終結過程で翻訳アレストを起こすことを見いだした。それに加えて、当初の計画には含まれていなかったが、それらのCPuORFがペプチド配列依存的に下流の主要ORFの翻訳を抑制することを見いだした。また、uORFペプチドが関与する遺伝子発現制御機構の遺伝学的解析に用いるための形質転換植物の準備も予定通りに進んでいる。以上のように、当初の目標としていた成果が得られており、また当初の計画通りに順調に研究が進んでいると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に同定した翻訳アレストを引き起こす3つのCPuORFについては、当初の計画通り、uORFペプチドによる翻訳アレストの生理的役割の解析を行う。そのために、それぞれのCPuORFの下流にルシフェラーゼ遺伝子あるいは蛍光タンパク質遺伝子をつないで植物に導入し、作出した形質転換植物を用いてそれらのCPuORFが条件依存的あるいは細胞・組織特異的な遺伝子発現制御に関与する可能性を検討する。また、これまでに同定したペプチド配列依存的に主要ORFの翻訳を抑制するuORFの中で生理的役割が明らかになっていないものについても、同様の方法で生理的役割の解析を行う。これまでに同定したペプチド配列依存的に翻訳を抑制するuORFの中ですでに生理的役割を解明したものについては、前年度に作出した形質転換作物を用いて、uORFペプチドが関与する遺伝子発現制御機構の遺伝学的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越して使用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年4月に物品の購入に使用した(平成29年4月6日に納品完了済み)。
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