研究課題
(1)マグネシウムに応答した翻訳制御機構の解析前年度までの研究により、主要ORFの翻訳を抑制するペプチドをコードする uORF の中から、Mgに応答した翻訳制御に関与するものを見出した。平成30年度は、その翻訳制御機構の解析を行った。uORFペプチドがMgに応答して主要ORFの翻訳を抑制する機構としては、細胞内Mg濃度が高い場合にuORFの翻訳開始効率が上昇するという可能性と、Mgに応答してuORFペプチドがリボソームを停滞させるという可能性が考えられる。一過的発現系と試験管内翻訳系を用いた解析によりこれらの可能性を検証したところ、Mg濃度は uORFの翻訳開始効率ではなく、リボソームの停滞効率に影響を与えることが明らかになった。また、Mg濃度は翻訳終結効率に影響を与えることが知られていることから、Mg濃度が高いとuORFの終止コドンにおける翻訳終結効率が低下し、uORFペプチドとの協働的な効果によりリボソームが停滞する可能性が考えられた。そこで、この翻訳制御がuORFの終止コドンに依存するかを調べたところ、終止コドンを削除してもMgに応答した翻訳制御が見られたことから、Mg濃度の翻訳終結効率への影響はこの翻訳制御には関与しないことが明らかとなった。(2)核小体ストレスに応答した翻訳制御機構の解析前年度の研究により、核小体ストレスに応答したANAC082タンパク質の発現誘導にuORFが関与することを見出した。平成30年度はその機構について解析し、核小体ストレスを誘導する試薬でシロイヌナズナの幼植物を処理した場合に、5’非翻訳領域にuORFを含まないスプライスバリアントの蓄積量が増加することを見出した。このことから、核小体ストレス条件では、選択的スプライシングによってuORFが除去されることにより、主要ORFからのタンパク質発現が誘導されることが示唆された。
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