研究課題/領域番号 |
16K07388
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
金原 和江 室蘭工業大学, 工学研究科, その他(客員准教授) (30587746)
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研究分担者 |
岩佐 達郎 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (00133926)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 小胞体 / 小胞体ストレス応答 / 脂質シグナリング |
研究実績の概要 |
平成28年度は主に次の3項目に関して実験を計画し、実行した。 (1)シロイヌナズナ野生型及び既知の小胞体ストレス応答に必須な因子を欠失した変異植物体を用いて、小胞体ストレス処理前後の主要脂質分子種のプロファイリングを行った。具体的には、 出芽後2週間の芽生えをツニカマイシンで24時間処理した植物体を用いて、脂質各種(MGDG, DGDG, PC, PE, PG, PI )の処理前後でのプロファイリングを行った。その結果、ある変異植物体においては、野生型とは異なる脂質プロファイリングを示すことを明らかにした。今後は、現在の結果の再現性を確認するとともに、その違いを分子レベルで明らかにする。 (2)逆遺伝学的手法により、脂質合成酵素を欠失した植物体の小胞体ストレス耐性を調べた。まず、はじめに脂質合成酵素各種を単独で欠失した植物体を取得するため、T-DNA挿入形質転換植物の単離を行い、複数のラインにおいて成功した。確立したホモ接合体を低濃度のツニカマイシンで2週間処理し、小胞体ストレス耐性を、野生型のそれと比較した。その結果、小胞体ストレスに対して著しく脆弱になる変異植物体を見出した。2年時以降は、これらの変異植物体に注目して解析を進めるとともに引き続き、T-DNA挿入形質転換植物の単離を行う。 本年度はさらに、(3)シロイヌナズナ根において、小胞体ストレス応答が可視化可能な植物体を構築し、その組織特異性を記述し、論文にまとめた (Front. Plant Sci. 8:144 DOI: 10.3389/fpls.2017.00144)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は次の2項目に関して実験を計画していた。(1)シロイヌナズナ野生型及び既知の小胞体ストレス応答に必須な因子を欠失した変異植物体を用いて、小胞体ストレス処理前後の主要脂質分子種のプロファイリングを行うことにより、既知の因子と脂質シグナリングとの関与を明らかにする。(2)逆遺伝学的手法により、脂質合成酵素を欠失した植物体の小胞体ストレス耐性を記述する。 (1)に関して、実際に野生型及び複数の変異植物体を用いて主要脂質分種のプロファイリングを行い、野生型とは異なるプロファイリングを示す変異植物体を見出すことに成功した。(2)においては、まずは複数のT-DNA挿入形質転換植物の単離に成功するとともに、それらのホモ接合植物体を用いて、小胞体ストレス耐性を調べた。これらのことから、現在までのところ当初の計画に沿って、本研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
上述の項目(1)(2)に関しては、初年度に得られた結果の再現性を確認するとともに、得られた実験結果を考察し、その結果を説明するための検証実験の計画及び実行へと進めて行く。平成29年度は、(1)(2)に加え、当初の計画に沿って、シロイヌナズナの、三量体Gタンパク質サブユニットの一つであるGβの、ストレス応答時の役割を明らかにする。はじめに、ストレス応答時のGβの細胞内局在の詳細を明らかにし、さらに生化学的手法によりGβサブユニットのin planta 相互作用因子を同定することを目指す。具体的には細胞内局在の観察結果と合わせ、用いる植物体のステージや組織を決定し、Venus タンパク質を融合したAGB1 の相互因子を、GFP 抗体を用いたプルダウンアッセイにより共沈降し、共沈降したタンパク質の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、物品費に関してはほぼ当初の計画通り使用したが、出席を予定していた学会に都合が合わず参加できなかったため旅費の次年度使用額が生じた。また、人件費と謝金、その他に関して、本年度は使用の必要がなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は研究打ち合わせ及び学会出席のために旅費を使用予定である。また人件費と謝金、その他に関しても、それぞれの目的に沿って使用予定である。
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