転写因子ICE1の相互作用因子であるCML10およびCML12は低温シグナル伝達機構において正の調節因子として働くことが明らかになっている。また、CML10およびCML12をターゲットとしたRNAi植物体では低温ストレスに対して感受性を示すことが示されたことから、CML10およびCML12の二重変異体をCRISPR/Cas9法により作出した。この二重変異体において、低温ストレスに対する耐性を調べたところ、野生型が示す応答性とほとんど変わらなかった。また、cml10 cml12二重変異体における、低温ストレス応答性遺伝子の発現を調べたが、野生型と比較して、その発現量にほとんど変化がみられなかった。このことから、RNAiによる発現調節はCML10およびCML12のみならず、そのほかのCMLにも及んでいる可能性が考えられた。CMLはシロイヌナズナにおいて50ケ存在することが、ゲノム情報から分かっているため、CML10およびCML12のピンポイントで低温シグナル伝達を調節しているのではなく、そのほかのCMLとも協調して低温シグナル伝達を調節していることが示唆された。CML10、CML12以外にどのCMLが影響を受けているかは特定はできていないが、ICE1をベイトとして酵母2ハイブリッドアッセイを50ケのCMLに対して行ったところ、13種のCMLがICE1と相互作用することが明らかとなった。これら13種CMLがICE1と相互作用し、CML10およびCML12と相乗的に機能すると考えられる。
また、ICE1においてCMLとの結合部位を特定することに成功した。CML結合部位を欠失したICE1をice1 ice2二重変異体に導入したところ、変異体を相補できなかったことから、CMLとICE1の結合は、生体内において重要な役割を示すことが示唆された。
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