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2016 年度 実施状況報告書

L-アラビノース合成系の起源と生理的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07391
研究機関埼玉大学

研究代表者

小竹 敬久  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20334146)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード糖ヌクレオチド / シロイヌナズナ / L-アラビノース
研究実績の概要

L-アラビノースは、植物特有の5炭糖(ペントース)の一種であり、かつ植物の主要な糖である。L-アラビノースは糖ヌクレオチドの一種であるUDP-L-アラビノースとして、UDP-キシロースから合成される。この反応は、シロイヌナズナでは、ゴルジ体型のMUR4と細胞質基質型のUGE1とUGE3により触媒される。本年度は、シロイヌナズナやイネに加えて、ゼニゴケやヒメツリガネゴケ等からもMUR4配列とUGE配列を収集し、これらの酵素の起源を探った。配列系統樹では、MUR4と比べて、UDP-L-アラビノース合成活性をもつUGEは比較的期限が新しいことが示唆された(Kotake et al., 2016, J. Plant Res.)。
UDP-L-アラビノース合成活性をもつシロイヌナズナのUGE1(AtUGE1)と、この活性を持たないAtUGE2について、両者の基質特異性の違いを生むアミノ酸残基の特定を進めた。まず、大腸菌で組換えAUGE1と組換えAtUGE2を作成し、これらはUDP-キシロースに対する活性(UDP-L-アラビノース合成活性)が大きく異なることを確かめた。次に、高次構造予測プログラムを利用して、両者の基質特異性に関与するアミノ酸残基の予測と絞り込みを行った。興味深いことに、AUGE1とAtUGE2では基質であるUDP-キシロースと接するアミノ酸残基に違いはないが、基質の通り道に位置するループに違いがあることがわかった。現在、この部位に位置するアミノ酸残基をAUGE1とAtUGE2の間で交換した組換え酵素を作成している。
シロイヌナズナのmur4変異体は、ロゼット葉で最大50%のL-Ara含量の低下を示すが、uge1 uge3二重変異体は目立った形質を示さない。細胞質基質型のUGE1やUGE3の役割を明らかにするために、掛け合わせにより、mur4 uge1 uge3三重変異体を作成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、(1)AtUGE1とAtUGE2に焦点を当てた基質特異性解析、(2)様々な陸上植物のUGEの基質特異性の解析、(3)シロイヌナズナの多重変異体を用いたUGEの生理的意義の解析、で構成される。本年度は、(1)および(3)は当初の予定通り実施できたが、(2)に遅れが生じた。(2)ではまず、シロイヌナズナに加えて、ヒメツリガネゴケやゼニゴケからUGEの遺伝子を単離し、大腸菌で組換えUGEを作成する予定であったが、ヒメツリガネゴケやゼニゴケで一部のUGEのcDNAをRT-PCRで増幅できなかった。次年度は、目的UGEが高発現するエイジや部位の植物試料を準備し、RNAの調製方法を改善することで、この問題を解決する予定である。

今後の研究の推進方策

細胞質基質型UDP-L-アラビノース合成酵素UGE1やUGE3は、真核生物で高度に保存されたUDP-グルコース4-エピメラーゼから生じた変異型酵素と考えられる。シロイヌナズナでは、UDP-L-アラビノース合成を獲得する前のUGEとして、UGE2, 4, 5(以下、UGE2型)が、獲得したUGEとしてUGE1,3(以下、UGE1型)が存在する。そこで、UGE1型とUGE2型で異なるアミノ酸残基が保存された部位を交換した組換え酵素を作成し、両者の基質特異性を比較する。基質の通り道に位置するループによく保存された違いがあるため、このループに含まれるアミノ酸残基を標的とする予定である。すでに、このような変異UGEを発現するための発現ベクターを準備し、組換え酵素作成を進めている。次年度は、基質特異性は、UDP-グルコース4-エピメラーゼ活性(UDP-グルコースとUDP-ガラクトースの間の変換)とUDP-キシロース4-エピメラーゼ活性(UDP-キシロースとUDP-L-アラビノースの間の変換)を調べる予定である。
UGEの機能分化は、被子植物や裸子植物ではみられるが、これら以前の植物では不明である。そこで、ヒメツリガネゴケとゼニゴケからUGE遺伝子を単離し、これらの植物に、UDP-キシロース4-エピメラーゼ活性をもつUGEが存在するか、を調べる。
被子植物や裸子植物が細胞質基質経路を獲得した生理的意義を探るべく、mur4 uge1 uge3三重変異体を解析する。先行的に5週齢のシロイヌナズナでL-Ara含量を調べたが、mur4 uge1 uge3三重変異体はmur4変異体とL-Ara含量にあまり違いがなかった。UGE1やUGE3は、限られたエイジや部位でUDP-L-アラビノース合成に貢献していると考えられる。そこで、次年度は、これらの変異体をエイジ別、部位別で比較する予定である。

次年度使用額が生じた理由

ヒメツリガネゴケやゼニゴケからの遺伝子単離が遅れたため、これに続いて行う予定だった発現ベクター作りも実施できなかった。

次年度使用額の使用計画

適切な植物試料を準備するとともに、RT-PCRの条件を改善し、cDNAを単離する。また、発現ベクターpET15bを用いて、組換えタンパク質調製のためのプラスミドを作成する。繰越す165,701円はこれらの実験に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] A protease/peptidase from culture medium of Flammulina velutipes that acts on arabinogalactan-protein2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshimi Y., Sugawara Y., Hori C., Igarashi K., Kaneko S., Tsumuraya Y., Kotake T.
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 81 ページ: 475-481

    • DOI

      10.1080/09168451.2016.1258985

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Metabolism of L-arabinose in plants2016

    • 著者名/発表者名
      Kotake T., Yamanashi Y., Imaizumi C., Tsumuraya Y.
    • 雑誌名

      Journal of Plant Research

      巻: 129 ページ: 781-792

    • DOI

      10.1007/s10265-016-0834-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 植物のプロテオグリカン2016

    • 著者名/発表者名
      小竹敬久
    • 雑誌名

      生物工学会誌「バイオミディア」

      巻: 96 ページ: 4

    • 査読あり
  • [学会発表] 特異的糖鎖分解酵素の発現によるAGPの機能阻害2017

    • 著者名/発表者名
      吉見圭永、吉村真美、八鍬頼誠、芝野誠二、出先能丈、渋谷直人、円谷陽一、小竹敬久
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      鹿児島大学(鹿児島県鹿児島市)
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-16
  • [学会発表] KONJACタンパク質によるGDP-マンノース合成の活性化2016

    • 著者名/発表者名
      山梨優貴子、佐分将太、田島範明、吉見圭永、Mortimer C. Jenny、Yu Xiaolan、Dupree Paul、小竹敬久、円谷陽一
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-19
  • [学会発表] AGP糖鎖に作用するGH27ファミリーのβ-L-アラビノピラノシダーゼ2016

    • 著者名/発表者名
      小竹敬久, 今泉知枝美 , 戸松遥美 ,北澤仁成 ,吉見 圭永, 芝野誠二, 金子哲, Paul Dupree, 円谷陽一
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-19
  • [学会発表] KONJAC proteins affect glucomannan accumulation through the stimulation of GDP-mannose synthesis2016

    • 著者名/発表者名
      Toshihisa Kotake, Shota Sawake, Noriaki Tajima, Jenny Mortimer, Lao Jeemeng, Toshiki Ishikawa, Xiaolan Yu, Yukiko Yamanashi, Yoshihisa Yoshimi, Maki Kawai-Yamada, Paul Dupree, Yoichi Tsumuraya
    • 学会等名
      Cell Wall Meeting
    • 発表場所
      Minoa Palace(ギリシャ・クレタ島ハニア市)
    • 年月日
      2016-07-12 – 2016-07-17
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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