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2017 年度 実施状況報告書

シロイヌナズナのリン脂質生合成変異株の低温生育阻害に関する生理生化学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K07392
研究機関埼玉大学

研究代表者

西田 生郎  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40189288)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード呼吸 / COP経路 / AOP経路 / 外向きNAD(P)HデヒドロゲナーゼNDB2 / 低温生育改善
研究実績の概要

ホスファチジルエタノールアミン(PE)はプラスチド膜以外の生体膜に存在するリン脂質で、シロイヌナズナでは、CDP-エタノールアミン合成酵素PECT1が律速する経路で合成される。pect1-4変異株はPECT1活性が野生株の26%まで低下し、低温生育阻害や早期花成など、多様な表現型を示す。
植物の呼吸はCOX経路(COP; Cytochrome c oxidase pathway)と、そのバイパスとしてAOX経路(AOP; Alternative oxidase pathway)が存在するが、pect1-4変異株ではCOP活性が野生型に較べて40%低下している。したがって、pect1-4変異株ではAOPが通常以上の役割を担っていることが推測される。本研究では低温におけるpect1-4変異株の生育と呼吸調節に注目しながら、pect1-4 aox1a-1二重変異株を作成し、その呼吸生理と低温での生育を観察した。
短日条件(8L/16D)、湿度40%の生育環境で、5週間培養した植物を低温(8℃)に移し、さらに30日間培養を行うと、pect1-4ではWTに較べて個体が矮小化するなどの表現型がみられたが、pect1-4 aox1a-1ではそのような表現型が大幅に回復していた。一方、5週目のpect1-4ではWTに較べてCOP活性の有意な低下が確認できたが、pect1-4 aox1a-1変異株ではWTレベルに回復していた。pect1-4 aox1a-1二重変異株では、野生型やpect1-4株に較べて、ミトコンドリア内膜の外向きNAD(P)HデヒドロゲナーゼNDB2の転写産物レベルが有意に上昇していた。したがって、pect1-4 aox1a-1ではNDB2が発現上昇することにより、COP経路の電子伝達を改善し、ATP生産を確保することにより低温生育に改善をもたらしたと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

pect1-4 aox1a-1二重変異株では、野生型やpect1-4株に較べて、ミトコンドリア内膜の外向きNAD(P)HデヒドロゲナーゼNDB2の転写産物レベルが有意に上昇し、低温における生育の改善をもたらすという新たな知見を見いだしており、論文を作成中である。
現在、恒常的にAOX活性を示すpect1-4 AOX1a*OX植物を作成中であり、H30年度中には、当初の予定通り低温におけるAOX1a過剰発現の影響を評価できる。

今後の研究の推進方策

pect1-4 aox1a-1二重変異株では、ミトコンドリア内膜の外向きNAD(P)HデヒドロゲナーゼNDB2の転写産物レベルが有意に上昇し、低温における生育の改善をもたらすという新たな知見を見いだしており、論文をめざす。
恒常的にAOX活性を示すpect1-4 AOX1a*OX植物を作成し、H30年度中には、当初の予定通り低温におけるAOX1a過剰発現の影響を評価する。
pect1-4変異株は呼吸活性の低下だけでなく、日長にかかわらず早期花成を示す。その原因には、エピジェネチックな遺伝子発現調節が関与することを見出しているが、本研究で明らかにしたpect1-4におけるミトコンドリア機能の低下との関連も評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

H30年度に開催される日本植物学会第82回大会(広島)および第60回日本植物生理学会(名古屋)で複数の研究発表をするため、その旅費を確保するために予算を繰り越した。また、論文発表用の予算をH30年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] pect1-4 aox1a-1 Double Mutants Grow Better Than pect1-4 Single Mutants at Low Temperature2018

    • 著者名/発表者名
      akuto Shimizu, Ko Noguchi, Ikuo Nishida
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] pect1-4のCOP活性低下はpect1-4 aox1a-1では解消する2017

    • 著者名/発表者名
      清水琢登 矢竹美樹 野口航 西田生郎
    • 学会等名
      日本植物学会第81回大会

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公開日: 2018-12-17  

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