研究課題
シロイヌナズナのpect1-4変異株は、CDP-エタノールアミン生合成活性(PECT1活性)が野生株の26%まで低下し、ミトコンドリアの膜脂質組成が変化し、低温生育阻害や早期花成など、多様な表現型を示す。植物の呼吸はCOX経路(COP; Cytochrome c oxidase pathway)と、そのバイパスとしてAOX経路(AOP; Alternative oxidase pathway)が存在するが、生育5週目のpect1-4変異株ではCOP活性が野生型に較べて40%低下している。したがって、pect1-4変異株は植物の生長や発達における呼吸調節の役割を解析するための新しい実験系として注目される。昨年度から今年度にかけて、pect1-4 aox1a-1二重変異株はその成長がpect1-4株よりも改善することを見いだした。pect1-4 aox1a-1株では、ミトコンドリア内膜の外向きNAD(P)HデヒドロゲナーゼNDB2の転写産物レベルが有意に上昇し、aox1a-1とあいまってCOPへの電子伝達活性が上昇し、それが原因で生育の改善をもたらされたと考えられる。今年度は、1)恒常的活性型AOX1a発現pect1-4植物を作成し、そのCOP活性を測定したところ、予備的な実験であるがCOP活性が異常なまでに低下する結果を得たので、研究期間を延長して、結果を確認しようとしている。また、2)pect1-4変異株のロゼット全体の呼吸活性の低下は、成熟葉と若い葉で較べると、若い葉で大きく低下していることもあきらかにした。3)pect1-4ミトコンドリアのBlueNative PAGEを行い、呼吸鎖複合体タンパク質の割合を調べたが、おおむね野生型の組成と変化はなかったが、複合体IIIダイマー(III2)に対するIII2-Ⅰ複合体の割合がpect1-4で若干低下している傾向が見られた。
2: おおむね順調に進展している
pect1-4 aox1a-1植物で、pect1-4よりも低温での生育が改善することを見いだし、論文を作成中である。恒常的活性型AOX1a発現pect1-4植物を作成し、そのCOP活性を測定したところ、予備的な実験であるがCOP活性が異常なまでに低下する結果を得たので、研究期間を延長して、結果を確認しようとしている。
恒常的活性型AOX1a発現pect1-4植物における呼吸調節について実験結果を積み重ねることにより、呼吸調節における新たな展開を期待している。javascript:onTransientSave()
pect1-4 aox1a-1二重変異株は低温における生育の改善をもたらすという新たな知見が見いだされ、呼吸生理に関する論文執筆に想定外の時間を要した。学術論文の投稿と採択は次年度にまたがるため、英文校閲料、追加実験費用、論文投稿料他の費用を残し、また学術講演会で成果発表をする費用に使用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Proc Natl. Acad. Sci. USA
巻: 115 ページ: 9038-9043
doi.org/10.1073/pnas.1810458115