本研究では、シロイヌナズナの有性生殖における核膜融合の分子機構の解明を目指し、核膜融合に関与する各因子の機能の解析を行ってきた。シロイヌナズナ有性生殖過程では、雌性配偶体形成過程の極核融合と重複受精過程の卵細胞と中央細胞それぞれでの精核融合の、3回の核融合が観察される。昨年度までの解析で、Gex1がこれら3回の核融合に必要な因子であることを明らかにした。 本年度はまず、GFP融合タンパク質を用いて、雌性配偶体における新規核膜融合因子Gex1の局在解析をおこない、Gex1が卵細胞と中央細胞特異的に発現する核膜タンパク質であることを明らかにした。また、核膜のドット様のGex1の局在像が得られたことから、Gex1は複合体を形成している可能性が示唆された。また、極核融合過程でのGex1の動態解析をおこない、Gex1は雌性配偶体の細胞化後に極核の接近から接触直後までの過程で、まず中央細胞、次いで卵細胞の核膜上に出現すること、Gex1のドット様の局在は極核融合過程で出現することが示された。 本研究では、雌性配偶体特異的遺伝子発現誘導系を構築し、これを用いて核内膜のSUNタンパク質に関する優性欠損変異体(SUNDN)を発現すると極核融合が阻害されることを示し、この過程にSUNタンパク質が関与することを示してきた。SUNタンパク質は核外膜のKASHタンパク質とLINC複合体を形成する。本年度は、KASHタンパク質との相互作用領域に変異を導入したSUNDNを発現しても極核融合欠損は引き起こされないことを示し、極核融合へのLINC複合体の関与が示唆された。
|