研究課題
小胞体は,チューブやシート状構造からなるネットワークとして細胞中に張り巡らされたひと続きの膜構造である.植物細胞では,myosin XIが結合して牽引することによって小胞体が活発に運動している.しかし,運動に関わる小胞体側の因子はほとんど分かっていない.これまでに,小胞体膜に局在するdynamin-like GTPase の一種であるROOT HAIR DEFECTIVE 3 (RHD3) のシロイヌナズナ変異体で小胞体運動が抑制されることを報告した.RHD3 は小胞体膜融合を担い,小胞体ネットワークの形成に必須な因子であるが,その運動にどのように関わるかは不明である.そこで,小胞体形態形成に関わる別の小胞体膜タンパク質LUNAPARK (LNP) に着目した.lnp変異体では小胞体のシート状構造が減少してネットワークが粗くなり,野生型では観察されない大きな凝集体が形成される.この変異体の小胞体運動を観察したところ,野生型とほぼ同程度の運動パターンを示した.さらに,lnp変異体では短いチューブ状構造やドット状の異常な小胞体断片が観察され,これらは周囲の小胞体に比べて高速で流動していた.興味深いことに,このような現象はrhd3変異体でも観察されており,細胞内全体の大きな小胞体の流れは顕著に抑制されるものの,小さな小胞体断片は方向性をもって動き回っていた.したがって,断片化した小胞体はミオシンXIによって運ばれやすく,細胞内でひと続きに繋がった小胞体はその運動性が制限されていると考えられる. 以上の結果から,rhd3変異体ではアクチン・ミオシンXIは機能できるものの,小胞体自体の運動性に異常がある可能性が考えられる.
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