研究課題
光合成器官である葉は、光環境応答によって積極的な老化制御を行う。葉老化では、葉緑体におけるクロロフィル分解や代謝変動によって速やかに黄変する。これまで、光受容体フィトクロム下流因子のbHLH型転写因子PIF4/5を介した葉老化制御機構が報告されているが、詳細な光応答メカニズムや代謝制御について不明である。そこで本研究では、新奇光シグナルによる葉老化制御機構の解明を目的として解析を行った。まず、光受容体フィトクロム下流の葉老化制御を調べるため、葉老化を促進するEnd-of-day far-red (EODFR)処理に対して応答性が低下するPIF遺伝子ファミリーの機能欠損型変異体を調べた。すると、PIF4/5以外のPIF変異体でも葉老化が強く阻害され、さらにアルコール処理転写誘導系を用いてこのPIFの遺伝子発現を上昇させると葉老化が促進された。この結果から、葉老化制御における新奇フィトクロムシグナル伝達機構が示唆された。また、共同研究によるメタボローム分析から、フィトクロム下流では中心代謝から二次代謝まで広範囲に代謝が制御されており、特に葉緑体代謝の制御にフィトクロムシグナルが重要な役割を担うことがわかった。また、青色光の連続照射下ではクリプトクロム依存的に葉老化が抑制されることがわかった。さらに、恒常的活性型クリプトクロム2の過剰発現により、暗所でも葉老化が抑制された。また、クリプトクロム下流で発現変動する遺伝子を大規模CAGE-seq解析により解析した結果、加齢や老化に関わる遺伝子群の発現がクリプトクロム依存的に抑制されることが示された。さらに、クリプトクロム下流因子として機能するbHLH型転写因子ファミリーの多重突然変異体では、葉老化抑制における青色光下への感受性が低下していた。これらの結果から、青色光下で葉老化を制御する新たなクリプトクロムシグナル伝達機構が示唆された。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Plant Physiology
巻: 182 ページ: 1114-1129
10.1104/pp.19.00535
Frontiers in Plant Science
巻: - ページ: -
10.3389/fpls.2020.00564