研究課題/領域番号 |
16K07419
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
徳元 俊伸 静岡大学, 理学部, 教授 (30273163)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ステロイド膜受容体 / 卵成熟 / 排卵 |
研究実績の概要 |
これまでステロイド膜受容体(mPR)が卵成熟誘起ホルモンの受容体であることをモルフォリノアンチセンスオリゴによるノックダウン実験等により示してきた。しかし、膜受容体の機能については相反する報告もなされ、世界的な議論にあることから遺伝子変異メダカを樹立することで生理機能の証明を目指す。一方、新技術である排卵誘導法を用いて排卵誘導に必要な遺伝子群の同定を目指す。 本年度はこれまで樹立したメダカゲノム中に存在する4種類のmPRの遺伝子変異メダカ系統の4重の変異体の系統樹立を進めると伴に、遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9システムにより確実な機能欠失系統の樹立を進めた。 一方、ステロイドホルモンや内分泌かく乱物質を飼育水に直接に添加し、サカナの生体そのものに作用させる新しい手法を確立した。この手法により排卵誘導の鍵遺伝子の探索を進めている。平成26,27年度にゲノム支援プロジェクトにより実施したRNA-seqにより選択できた11遺伝子についてリアルタイムPCRによる発現変動の確認ができた。これらの候補遺伝子について順次、遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9システムにより機能欠失系統の樹立を進めた。最初に系統樹立に成功したstm遺伝子ノックアウト系統では排卵には異常が見られなかったものの受精率に低下が見られ、stm遺伝子が耳石形成だけでは無く受精にも関与するという新たな知見が得られた。これらの結果については原著論文として発表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は特にインビボ卵成熟・排卵誘導法による排卵誘導遺伝子の同定の項目で進展が見られた。RNA-seq法による排卵誘導遺伝子候補のリストアップの結果も論文として公表できた。また、マイクロアレイ法、RNA-seq法によりリストアップした候補遺伝子についてゲノム編集技術による機能解析を開始できた。ノックアウトメダカについて4重変異体の樹立に成功したものの特段の異常は観察されなかった。一部の遺伝子で点突然変異による機能欠失が不十分であると考えられる。ゲノム編集によるノックアウト系統の作出が順調に進んでいることからメダカに加えゼブラフィッシュにおいてもmPR遺伝子群のノックアウト系統の作出を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術による機能解析も同時に進める。同手法は排卵誘導遺伝子の解析においてゼブラフィッシュでは導入に成功している。非常に高い確率で遺伝子破壊に成功していることからメダカにおいても短期間での成功が期待される。また、ゼブラフィッシュにおいてもmPR遺伝子群のノックアウト系統の作出を進める。排卵誘導遺伝子候補については引き続きゲノム編集系統の作出を進め、排卵誘導の鍵遺伝子の解明を目指す。mPRタンパク質の大量合成についてはカラムクロマトグラフィー法にさらに改良を加えてスケールアップを試みる。
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