研究課題/領域番号 |
16K07423
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
峯 一朗 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (00274358)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液中観察 / 巨大細胞性藻類 |
研究実績の概要 |
本年度の研究によって主に次の2つの成果が得られた。 (1) 試料観察容器の作成 細胞壁の微細構造の液中観察が本研究の主な技術的な課題であるが,顕微鏡の試料台に用いられるガラスや金属などの無機材料と細胞壁のような有機材料を,液中に漬けたまま確実に固定することは本来困難であり,本研究の最大の技術的課題である。本研究では,様々な試行錯誤を経て試料台の形状や接着剤などを最適化することにより,まず,緩衝液中に漬けたままの細胞壁試料を確実に固定する容器と試料の固定方法を開発し,実用化することができた。また,細胞壁試料に一定方向の張力をかけた状態で,微細構造観察の妨げにならないように確実に固定することが可能な試料観察容器も試作しておいる。これらの成果により,本研究の基本的な技術的課題が解決されたと考えられる。 (2) バロニアの細胞壁の原子間力顕微鏡による液中観察 本年度は,バロニアの細胞壁内外表面における細胞壁の骨格要素とマトリックス要素の原子分解能形状像を大気中,および液中AFMにより 観察した。その結果,これまで詳しい構造が知られていなかった本藻細胞壁の繊維状マトリックス成分の構造や性質が明らかになった。さらに,予備実験により,このマトリックス成分が細胞壁の構造維持に機能することを示唆する結果が得られており,引き続き本研究でさらに観察・実験を重ねることにより本藻の細胞壁の力学的性質を調節する仕組みが明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【材料の調達】細胞壁を単離する材料として,次の3 種類の巨大細胞性藻類の培養株を確保し,予備培養を開始した。(1) 黄緑藻フシナシミドロの一種 Vaucheria frigida C.Agardh (2) 緑藻シャジクモChara braunii Gmelin (3) 緑藻バロニア Valonia utricularis C.Agardh 【試料観察容器の作成】緩衝液中に漬けたままの細胞壁試料に張力をかけた状態で,微細構造観察の妨げにならないように確実に固定することが可能な試料観察容器を試作した。 【原子間力顕微鏡による細胞壁の液中観察】材料の細胞壁を液中にて確実に固定できる試料観察容器を設計・製作し,それを用いてバロニアの細胞壁内外表面における細胞壁の骨格要素とマトリックス要素の原子分解能形状像を大気中,および液中AFM 観察により取得した。その結果,これまで詳しい構造が知られていなかった本藻細胞壁の繊維状マトリックス成分の構造や性質が明らかになった。他種の細胞壁および生細胞におけるのと同様の張力をかけた単離細胞壁における経時的な観察は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究に取り組む。 【原子間力顕微鏡による細胞壁の液中観察】バロニアに続いて液中観察用の試料容器を用いてのフシナシミドロおよびシャジクモにおいても細胞壁内外表面における細胞壁の骨格要素とマトリックス要素の原子分解能形状像を大気中,および液中AFM 観察により取得する。また,バロニアも含めた3種類の材料を用いて,生細胞におけるのと同様の張力をかけた単離細胞壁における経時的な観察を試みる。 【生理的条件の調節】フシナシミドロの単離細胞壁は弱アルカリ性条件下で最も伸びやすくなり(細胞壁伸長に必要な張力が低く伸長量が大きくなる),酸性条件下では非常に伸びにくくなる[9]。また,タンパク質分解酵素や1,3-βグルカナーゼで処理することにより,細胞壁マトリックス要素が分解されてその強度が弱まる(張力が低く伸長量も小さくなる)。一方,バロニア類やシャジクモ類の細胞壁は,酸性条件下およびCa2+キレート剤処理により伸びやすくなることが知られている。このような細胞壁の伸びやすさや強度を変化させるような条件(pH,キレート剤,酵素など)で前処理をした細胞壁,あるいはそのような水溶液に漬けた状態の細胞壁において,上記のような張力をかけた状態での骨格要素とマトリックス要素の微細形態の経時的変化の観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を一部節約することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度により有効に消耗品を活用するために使用する。
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