研究課題/領域番号 |
16K07426
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
堀田 耕司 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (80407147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 3Dイメージング / カタユウレイボヤ / 神経管形成 / Ca2+イメージング |
研究実績の概要 |
脳は一本の管から生じる。発生後間もない胎児は神経管の前方が膨らみ、前脳胞、中脳胞、菱脳胞といった基本的な脳部位の原型を形成する。遺伝子発現による区画決定が明らかにされても、このような脳の“形作り”には解明すべき点が多い。そこで申請者は細胞レベルの定量的な解析が個体まるごと用いて可能であるホヤに注目し、そもそも連続性を保った一本の管が、脳部位ごとに形の違いを生み出すしくみを解明することを研究の目的とした。これまでに核をラベルした予定神経細胞の3次元イメージングに成功し、それぞれの核の振舞いから脳形態形成の仮説モデルを提案した。本申請ではそれらの仮説モデルを検証するために、ホヤ神経管形成中の全細胞系譜を決定した後、核だけではなく、細胞膜および細胞分裂のイメージングにより、個々の細胞の振舞いの定量的な解析を行う。神経管形成過程において神経板期から一部の神経板系譜の細胞において一過的なカルシウムイオン濃度上昇が観察された(Akahoshi et al., 2017)。これらの一過的カルシウムイオン濃度上昇は神経管形成における形態形成過程に関与している可能性が示唆された。一方、異なる領域での神経管形成過程の違いを理解するには各領域を構成する細胞の増殖、細胞極性、腔所形成、細胞移動を理解する必要がある。そこで本年度は神経管を形成する前の神経板期76細胞の細胞をラベルし追跡するために、神経管特異的に発現を促すDMRT遺伝子プロモーター下にUV照射によって色を変えることの可能なKaede蛍光タンパク質を組み込んだ遺伝子発現コンストラクトを作製し、胚へ導入した。結果、Kaede蛍光タンパク質を神経管細胞系譜で発現するホヤ幼生を得ることができた。一方、SPIM顕微鏡を使用してホヤの体全体を3Dでイメージングすることを試み、可能であることが確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度の後半で冷却温度プレートの故障により、発生時のホヤの温度コントロールが不安定となってしまい、長期の修理を要した。しばらく歩留まりの悪い実験を行ったため、進捗が遅れてしまった。細胞膜のイメージングのためにFMdyeやLifeActを試しているが前者は長時間イメージングに際し、細胞内部へのインターナリゼーションが生じてしまいしっかりとした細胞輪郭が得られなかった。現在LieActおよび膜局在型GFPを試している。
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今後の研究の推進方策 |
SPIM顕微鏡を使用してホヤの体全体を3Dでイメージングすることを試み、可能であることを確認した。今後、Kaedeやカルシウムイオンインジケータを導入したホヤを用いて神経板期から幼生期に至るまでの神経管を構成する細胞群の長時間イメージングを行う。注目した細胞をKaedeラベルし、発生過程において早い時期から細胞系譜を追跡するとともに、カルシウムイオン濃度上昇の情報と合わせ、神経管形成における形態形成過程とカルシウムイオン濃度上昇との関係を明らかにする。また、得られたZスタック画像をもとに個々の細胞の輪郭抽出後、ボリュームレンダリングを施し、細胞の形態の幾何情報を抽出し、実際の細胞の数や座標だけでなく、形態を反映した定量的・幾何学的情報(細胞体積・表面積・扁平度・球形度・細胞数・位置・細胞極性等の情報)の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験材料のホヤを使用する匹数および送料が毎週多少変動するため次年度使用額が生じた。
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