研究実績の概要 |
神経管形成過程におけるロバスト性を調べるために卵片から生じさせた矮小化ホヤ尾芽胚における神経管の形態を調べた。その結果、感覚胞や神経管の細胞数は減少する一方、運動神経節の細胞数、細胞配置は個体サイズ縮小に伴っても変化しないことがわかった(Matsumura et al., 2020 Dev.Biol.)。一方、神経板期から一部の神経板系譜の細胞においてカルシウムイオン濃度が振動する細胞が観察された(Akahoshietal.,2017)。神経管形成における形態形成過程に関与している可能性があるためこのカルシウムイオン振動する細胞の数、位置、系譜を明らかにすることを試みた。Kaede蛍光タンパク質および核局在GCaMPを用いることによりわずか1対の背側運動神経節細胞A10.64細胞であることが同定できた。このホヤ運動神経節におけるCa2+振動細胞が振動を引き起こす分子メカニズムの理解のために、1細胞由来の転写物を網羅的に同定可能な、1細胞RNA-Seq(scRNA-Seq)を試みた。その結果、数十秒周期でCa2+振動しつづける細胞を発見し、単離することに成功した。このことは、ホヤCa2+振動細胞は細胞間の相互作用なしに細胞自律的にCa2+振動可能であることを意味する。また興味深いことに本細胞は単離後のタイミングによって振動の周期が異なっており、より後期では20~30秒周期へと短くなった。単離されたCa2+振動細胞からSMART-Seq HT(Takara Bio)を用いてcDNAライブラリを作製後、iSeq 100システム(illumina)により200万リード分の転写配列の解読に成功した。得られた配列データを、カタユウレイボヤ遺伝子モデル(KH2012モデル)と照合し複数のチャネル遺伝子等A10.64細胞特異的に発現変化する遺伝子のリストを得た
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