研究課題/領域番号 |
16K07427
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
藤原 祥子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30266895)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 石灰化 / ハプト藻 / 円石藻 / バイオミネラリゼーション / 転写産物データベース / 形質転換系 |
研究実績の概要 |
円石藻は、ハプト藻植物門に属す微細藻類で、細胞表面に精巧な形態の石灰化された鱗片(円石)をもつ。本研究では、その石灰化の分子機構の解明を目的としている。2年目である今年度は以下の結果を得た。1. 初年度に確立した円石藻PleurochrysisのRNAi による円石形成関連遺伝子のスクリーニング系を用いて、cDNA マクロアレイ解析・転写産物データベースを活用して得られた候補遺伝子のスクリーニングを行った。円石形成細胞特異的発現遺伝子についてRNAiを行い、偏光顕微鏡観察及びフローサイトメトリーにより細胞の石灰化の度合いを調べたところ、系の確立で用いたカーボニックアンヒドラーゼ遺伝子に加え、13遺伝子のRNAiでコントロールと比較して円石形成の少ない細胞が多く確認できた。特に4遺伝子では顕著であり、これらの遺伝子がPleurochrysisにおいて円石形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は、これらの遺伝子産物の局在性や機能を調べていく予定である。2. 初年度に確立した円石の基板(ベースプレート)上でのin vitro石灰化系を用い、SDS、DTTによりタンパク質を抽出したベースプレート上で石灰化を試みたところ、石灰化が抑制されることが明らかになった。このことと昨年度の酸性多糖添加実験の結果から、このタンパク質に酸性多糖Ph-PS-2が結合し、ベースプレートの縁で石灰化が始まる可能性が示唆された。現在タンパク質の同定を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に確立したRNAi によるスクリーニング系を用いて、円石形成関連遺伝子のスクリーニングを行うことができた。また、昨年度確立したベースプレート上でのin vitro石灰化系を用いて、酸性多糖Ph-PS-2に加え、円石結合タンパク質の円石形成における役割を示すことができた(Sakurada et al. in press)。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度得られた円石形成遺伝子について、形質転換系や in vitro 石灰化系を駆使して、遺伝子産物の局在性やカスケードにおける機能を解析し、Pleurochrysisにおける円石形成カスケードの全容解明を試みる。 ① Pleurochrysisの形質転換系を用いたin vivoでの機能解析:得られた遺伝子について、形質転換系を利用し、変異株への相補性試験、レポーター遺伝子を用いた局在性の検討、過剰発現株を用いたin vivoでの機能の推定を行なう。機能の推定には、円石のCa量、酸性多糖量の測定、走査型電顕による円石の形態の観察、超薄切片の透過型電顕観察による細胞内円石形成過程(ココリス小胞)の観察、シャドウイング・透過型電顕によるベースプレートの形態観察を行う。カーボニックアンヒドラーゼやCa2+, HCO3-などのイオン輸送体遺伝子の場合には、これまでの経験を活かし活性を測定する。 ② 大腸菌発現系等を用いた機能推定:イオン輸送体に関しては、大腸菌、酵母、Xenopus oocyte、もしくはリポソームの系で、RIもしくは電極を用いて測定する。酸性多糖やベースプレート、ココリス小胞の合成・構築に関わる可能性のあるものについては、酵素活性・in vitro石灰化に及ぼす影響を解析する。 ③ ゲノム解析、プロモーター解析:先ず現在ショートリードデータにより得られているドラフトゲノムの完成度をロングリードデータとの複合により向上させる。得られたデータを基に、石灰化関連遺伝子のプロモーター解析を行い、遺伝子発現ネットワークの理解を進める。さらに、Pleurochrysisとは別の系統に属す円石藻Emilianiaのオルソログ遺伝子のデータと比較を行い、円石を形成しないハプト藻の情報も加味して円石形成機構における共通性と特殊性を明らかにする。
|