一部の真骨魚類において、終神経(脳神経の一種)に存在するGnRH3ニューロンは性行動の制御に関与することが示唆されている。一方、特定の神経ペプチドの脳内機能を理解する上では、ペプチド放出がどこで起こっているか、その位置的な情報が不可欠である。メダカ終神経を構成するGnRH3ニューロンは終脳腹側部の細胞体から脳内に広範囲に軸索を投射するが、そのGnRHペプチド放出部位が、軸索終末であるか、軸索途上のバリコシティ(膨隆部)であるか、細胞体であるか、またはこれらのすべてであるかは、このニューロンの生理学的機能を知る上で必須の情報である。そこで本計画ではGnRH3ニューロンにおけるペプチドの放出個所の特定をめざした。従来の免疫電子顕微鏡観察の手法では生体膜の形態保存が不十分で、ことに中枢神経系では観察および結果の解釈に多大の困難を伴ってきたが、前年度までの試みで特定のペプチドを認識する抗体をもちいた免疫電子顕微鏡の条件を検討し、固定等、試料作成の条件の最適化をめざした。この結果、分泌小胞など細胞内膜系の形態の比較的良好な保存と抗原性の一応の両立をみた。この成果を踏まえ、2019年度はより汎用性の高い手法の確立を目指し、GFPに対する免疫電顕の条件を検討した。申請者らが作成したTN-GnRH3ニューロンをGFP標識したメダカを材料としてGFPの免疫電顕を実行し、おおむね満足すべき結果を得つつあるが、まだ試料間のばらつきも多く、より安定した条件を求めて改善中である。
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