研究課題/領域番号 |
16K07431
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
岩佐 達郎 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (00133926)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 化学感覚タンパク質 / 匂い分子結合タンパク質 / X線小角散乱 / 立体構造 / 化学感覚 |
研究実績の概要 |
本年度は、1)溶液中でのCp-Lip1, CSP1 タンパク質の立体構造を明らかにする。 2)化学分子結合に伴う立体構造の変化を明らかにする。の二つの項目について研究を進めた。Cp-Lip1, CSP1 の機能を理解するため、溶液中の構造がどのような条件によって変化するのかを調べた。昨年度に引き続き、高エネ研の放射光共同利用実験採択課題「匂い分子結合タンパク質のリガンド結合に伴う構造変化と機能の関連」(2016G683) により、X線小角散乱測定(SAXS ; small angle X-ray scattering)測定を、2017年6月、7月、11月、12月、2018年2月、3月に行った。Cp-Lip1については、比較検討するためにアミノ酸配列の類似したCp-Lip2を、またCp-Lip1のCys残基をSerに置換した変異体についても測定した。CSP1については、類似体であるCSP3、CSP13についても測定を行なった。いずれの場合にも、化学分子結合に伴う大きな構造の変化は明らかではなく、それよりも周辺pHの変化に伴う構造変化の方が大きかった。これらのタンパク質の生理機能として考えられている、化学分子を結合し、受容体に渡す(受容体近傍で結合している化学分子を解離する)分子機構について、示唆を与える結果であると考えている。また、Cp-Lip1が嗅覚受容体の匂い分子に対する電気生理学的応答に与える効果を、単離した嗅細胞を用いて測定した(電気通信大学・中村整教授との共同研究)。その結果、Cp-Lip1分子が単離嗅細胞の匂い分子応答を増強することを示す結果を得た。この成果については現在論文投稿中である。 化学分子結合に関与するアミノ酸やpH変化、リガンド解離に伴うアミノ酸レベルでの構造変化を明らかにするには、NMR測定が効果的であると考えている。予備的実験は始まっているが、15Nラベルの試料調整に問題があり、進行していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、1)溶液中でのCp-Lip1, CSP1 タンパク質の立体構造を明らかにする。 2)化学分子結合に伴う立体構造の変化を明らかにする。の二つの項目について研究を進めた。X線小角散乱については種々変異体、類自体についての測定も行うことができた。それらのpH変化、化学分子結合時の変化についても測定を終え、化学分子結合に伴う大きな構造の変化は明らかではなく、それよりも周辺pHの変化に伴う構造変化の方が大きいことがわかった。これらの成果について、1件の関連論文発表、2件の国際学会発表、3件の国内学会発表を行うことができた。以上より、本研究は概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
X線小角散乱データをもとに論文をまとめる。さらにNMR測定により、より詳細な構造変化を明らかにしたい。そのため、15Nラベル試料の調整を、種々の類似体等についても調製を試み、大量生成可能な試料で測定を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は高エネ研での測定等の出張が多く、旅費が最大の支出費目となった。しかし、当該科研費による物品の購入を絞ることによって、旅費に回すことができた。また、人件費も他の研究費からの支出し、本科研費からの出費は減額できた。これらの対応により、次年度使用額が生じた。本年度は最終年でもあり、効率的に使用する。
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