研究課題
昨年度、分子内での詳細な構造変化を明らかにするために、未ラベルの試料を用いた1H NMRの予備的測定をおこなった。本年度は15Nラベルの試料(CSP1とCp-Lip1)の調製を進めていたが、2018年9月の北海道胆振東部地震に伴う停電のため、保存試料の温度が上昇した。このような試料では、測定結果の信頼性を評価できないと判断し、NMR測定を断念した。昨年度、CSP1とCSP13のリガンド結合特性に差のあることを見出した。北条らによるin situ hybridizationによると、両タンパク質遺伝子はクロオオアリの触角内の同一細胞で発現していることがわかっている。それらの組織内局在について検討した。各々に特異的なペプチドを合成し、抗血清を作成した。まず、発現精製した両タンパク質で各抗体がCSP1またはCSP13に特異的であることを確認した。次に、クロオオアリアリの脚、顎、触角のタンパク質を調製し、ウエスタンブロットした結果、どちらも触角由来タンパク質にのみ交差した。これは北条らによる発現解析の結果と一致する。 さらに、免疫組織化学的に、触角内での局在を調べた。抗CjapCSP1血清では触角にある錐状感覚子の先端部分に抗体に由来する蛍光が観察された。一方、抗CjapCSP13血清による免疫染色の結果では触角内でneural cell周辺にあるsupporting cellと思われる細胞に蛍光が観察された。この結果は、CSP1とCSP13の遺伝子は同じ細胞で発現しているが、タンパク質は異なる部位に輸送されることを示している。電気通信大学・中村整教授との共同研究により、Cp-Lip1分子が単離嗅細胞の匂い分子応答を増強することを電気生理学的に示すことができた。昨年度、この成果を論文にまとめ、投稿したが、受理されなかった。本年度、さらに測定例を増やし、修正稿を準備中である。
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Photochemistry and Photobiology
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The Journal of Physical Chemistry B
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