研究課題
本研究はシンプルかつ操作可能であるホヤ幼生の中枢神経系をモデルとして、神経活動の高速ライブイメージングと光遺伝学的な手法を組み合わせることにより、遊泳運動を生み出す神経回路の動作原理を単一ニューロンレベルで解明することを目指している。ホヤ幼生の遊泳運動神経回路は5対10個のコリン作動性ニューロンと2対4個のGABA/グリシン作動性ニューロンの合計14個のニューロンによって構成される。遊泳運動神経回路を構成する個々のニューロンに特異的に発現するマーカー遺伝子の単離、および個々ニューロンで光遺伝学的なツールを発現させるエンハンサーの単離を目的として、プリンストン大学 Mike Levine教授の研究室との共同研究により、ホヤの中期尾芽胚、後期尾芽胚、幼生の3つのステージについて、単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。得られたシングルセルトランスクリプトーム解析のデータについて、これまでに知られている個々の細胞のマーカー遺伝子の発現パターンから、5対10個のコリン作動性ニューロン、2対4個のGABA/グリシン作動性ニューロンについて、個々の細胞に特異的なマーカー遺伝子を単離することに成功した。現在、これらのマーカー遺伝子のエンハンサー領域を用いて、各細胞に単一細胞レベルで光遺伝学的なツールを発現させ、その活動を制御することにより、一つ一つの細胞の遊泳運動における機能の解析を行っている。さらに、個々のニューロンで特異的に発現する転写因子/シグナル分子の機能を阻害することにより、ニューロンの運命が変換した個体を得ることに成功している。今後はニューロンの運命が変換した個体についても生理的な解析を行って行きたいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
遊泳運動神経回路の神経活動の高速ライブイメージングは初年度でほぼデータを得ることが出来ている。また、単一細胞トランスクリプトーム解析を取り入れることにより、個々のニューロンの機能を解析するためのツールや個々のニューロンの分化運命を変換するためのツールが数多く得ることが出来ており、研究はおおむね順調に進展している。
当初の計画に予定していた「神経活動の高速ライブイメージング」、「光遺伝学的な手法を用いた個々の神経細胞の機能解析」については順調に進展している。さらに新たに発展している「特定のニューロンが欠損・置換した個体の遊泳運動解析」についてイメージングや光遺伝学的な手法を取り入れ生理学的な研究を進めていく。
昨年度の未使用分も含め、予算計画を立てていたが、シングルセル解析費用など国際共同研究先のプリンストン大学 Mike Levine 教授の研究室が負担してくれたため、予想よりも物品費の使用額が少なくなってしまった。今年度は前年度の未使用分も含めて、予算計画を見直し、予算を執行する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114 ページ: E6352-E6360
10.1073/pnas.1704194114