研究課題/領域番号 |
16K07433
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀江 健生 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10455925)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | ホヤ / 遊泳運動 / 運動神経回路 / ニューロン / 光遺伝学 / 神経活動イメージング |
研究実績の概要 |
本研究はシンプルかつ操作可能であるホヤ幼生の中枢神経系をモデルとして、神経活動の高速ライブイメージングと光遺伝学的な手法を組み合わせることによ り、遊泳運動を生み出す神経回路の動作原理を単一ニューロンレベルで解明することを目指している。 ホヤ幼生の遊泳運動神経回路は5対10個のコリン作動性ニューロンと2対4個のGABA/グリシン作動性ニューロンの合計14個のニューロンによって構成される。遊泳運動神経回路を構成する個々のニューロンに特異的に発現するマーカー遺伝子の単離、および個々ニューロンで光遺伝学的なツールを発現させるエンハンサーの単離を目的として、プリンストン大学 Mike Levine教授の研究室との共同研究により、ホヤの中期尾芽胚、後期尾芽胚、幼生の3つのステージについて、単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。得られた単一細胞トランスクリプトーム解析のデータについて、これまでに知られている個々の細胞のマーカー遺伝子の発現パターンから、5対10個のコリン作動性ニューロン、2対4個のGABA/グリシン作動性ニューロンについて、個々の細胞に特異的なマーカー遺伝子を単離することに成功した。これらのマーカー遺伝子のエンハンサー領域を用いて、各細胞に光遺伝学的なツールを発現させ、その活動を制御することにより遊泳運動における機能の解析を行ったところ、遊泳運動の開始と維持に重要な働きをするニューロンを同定することに成功した。さらに、個々のニューロンで特異的に発現する転写因子/シグナル分子の機能を阻害することにより、ニューロンの運命が変換した個体を得ることに成功した。また、単一細胞トランスクリプトーム解析により得られたデータをもとに、遊泳運動を制御する感覚神経ニューロンの分化機構を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単一細胞トランスクリプトーム解析のデータをもとに真に単一細胞でニューロンの活動を制御する実験系の構築に成功しているが、研究拠点の移動などもあり、当初の予定より少し研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に予定していた「神経活動の高速ライブイメージング」、「光遺伝学的な手法を用いた個々の神経細胞の機能解析」については、実験データの取得はほぼ完了しているため、今後は定量的な画像解析を進めていく。さらに新たに発展している「特定のニューロンが欠損・置換した個体の遊泳運動解析」については、イメージングや光遺伝学的な手法を取り入れ生理学的な研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホヤ尾芽胚における単一細胞トランスクリプトーム解析を行ったところ、遊泳運動神経回路の単一のニューロンで特異的に発現する遺伝子の同定や遊泳運動神経回路の単一のニューロンで外来遺伝子を発現させるための実験系を構築することに成功した。本研究の遂行上、遊泳運動神経回路の機能を単一細胞レベルで解明するために、新たに同定したニューロンの神経回路の人為的な操作実験を従来の研究に追加で実施する必要が生じたため。次年度は本年度の未使用分も含めて、予算計画を見直し、予算を執行する。
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