研究課題/領域番号 |
16K07439
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐倉 緑 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (60421989)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 昆虫 / 偏光 / 経路積算 |
研究実績の概要 |
多くの昆虫は経路積算によるナビゲーションを行う、経路積算には、移動中に「方向」と「距離」を検出していく必要があるが、このうち天空の偏光による方向検出の神経機構に関しては、すでに多くの知見が蓄積されている。一方、距離検出および方向情報ときょり情報の統合機構については未解明な点が多い。そこで本研究では、ミツバチの採餌飛行を実験室内で再現するフライトシミュレータを構築し、仮想空間内で特定の方向と距離にある疑似餌場を学習させる実験系を確立し、学習行動中の神経活動を脳の局所破壊や慢性埋め込み電極による記録を使って明らかにすることを目指している。 本年度は、昨年度までに構築したフライトシミュレータとフライトシミュレータ内での飛行行動の画像解析技術を用い、事前の採餌経験に基づいて飛行軌跡がどのように変化するかについて解析を行った。フライトシミュレータは、ミツバチに距離を知覚させるオプティックフロー刺激と、方向を知覚させる偏光刺激を与えられるように設計し、シミュレータ内でのミツバチの挙動は側方および後方からのカメラで撮影し、その飛行姿勢の映像から実際の飛行軌跡を推定できるようになっている。野外で採餌訓練を行った個体に対して、餌場から帰巣する際の飛行軌跡を解析した結果、上方からの偏光情報に基づいて往路と同様な軌跡を描くことが確認された。今後は、フライトシミュレータ内での採餌訓練を効率良く行うための条件検討を引き続き行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度確立したフライトシミュレータを用いて、採餌経験に基づく飛行軌跡の変化を解析できた。当初予定していたシミュレータ内での採餌訓練についてはまだ条件検討の段階であり、効率良い学習成功率を挙げることができていないが、その代わりに野外で種々の視覚刺激を用いた訓練を行うことができている。以上を踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
行動実験に関しては、引き続きフライトシミュレータ内での採餌訓練に関する条件検討をすすめるとともに、野外の様々な条件下で餌場学習した個体の軌跡解析についてもデータを蓄積してゆく。さらに、飛行中の脳内の神経活動記録についても実験を開始する。飛行中の記録が困難な場合には、野外で訓練した個体を用いて、固定した状態での記録への方針変更も視野に入れ、学習行動の神経基盤の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
フライトシミュレータに関する共同研究グループであるオーストラリアの研究室に赴き、シミュレータの改良と予備実験を行う予定であったが、先方の都合により訪問が中止になったため、訪問を次年度に延期し、その分の経費を繰り越した。よって次年度に予定通り経費を支出する見通しである。
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