研究課題
多くの昆虫は経路積算によるナビゲーションを行う、経路積算には、移動中に「方向」と「距離」を検出していく必要があるが、このうち天空の偏光による方向検出の神経機構に関しては、すでに多くの知見が蓄積されている。一方、距離検出および方向情報ときょり情報の統合機構については未解明な点が多い。そこで本研究では、ミツバチの採餌飛行を実験室内で再現するフライトシミュレータを構築し、仮想空間内で特定の方向と距離にある疑似餌場を学習させる実験系を確立することを目指している。今年度は、昨年度までに構築したフライトシミュレータとフライトシミュレータ内での飛行行動の画像解析技術を用い、事前の採餌経験に基づいて飛行軌跡がどのように変化するかについて解析を行った。フライトシミュレータは、ミツバチに距離を知覚させるオプティックフロー刺激と、方向を知覚させる偏光刺激を与えられるように設計し、シミュレータ内でのミツバチの挙動は側方および後方からのカメラで撮影し、その飛行姿勢の映像から実際の飛行軌跡を推定した。野外で採餌訓練を行った個体に対して、餌場から帰巣する際の飛行軌跡を解析した結果、上方からの偏光情報に基づいて往路と同様な軌跡を描くことが確認され、長距離の採餌には経路積算が優位に利用されることが明らかとなった。また、複数の偏光パターンを組み合わせて訓練することにより、加算されたベクトル方向への学習を成立させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたフライトシミュレータによる飛行軌跡の評価とそれを利用して偏光情報に基づく餌場学習を確認することができた。現在、これらのデータを論文化する作業を行っている。
得られた成果の論文化のために、研究期間を延長した。今後は、データのさらなる解析を行い、論文を完成させることで課題を完了する。
期間中に得られたデータについて現在投稿論文を準備中であり、原稿の完成が次年度になる見込みであるため、論文投稿費用として計上していた金額分を次年度に繰り越した。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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