研究課題/領域番号 |
16K07440
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩越 栄子 広島大学, 総合科学研究科, 研究員 (50311296)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新規分泌性小タンパク質 / 脂肪蓄積 / 慢性投与実験 / 摂食行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究代表者らがニワトリ・ヒナで発見した新規分泌性小タンパク質(NPGLと命名)の鳥類における機能解明である。平成28度の研究計画では、まずニワトリ・ヒナにおいて、脳室内に慢性的にNPGLを投与する方法を確立することであった。初生ヒナの成長速度は著しいため、カニューラの長期間の装着が困難であることが予想されたことから、物質の長期的効果を調べる実験についての報告はまだなかったためである。 そこで、手術に用いるにヒナの日齢を考慮しながら、脳室内へ物質(指標として色素であるエバンスブルーを用いた)を注入するためのカニューラの位置を決め、かつ、2週間の投与期間中に装着したカニューラの脱離がないかの確認実験を行った。その結果、脳室内に投与したい物質を確実に投与できる方法を確立した。 次に、確立したニワトリ・ヒナにおける慢性投与方法を用いて、NPGLを2週間にわたり、脳室内へ投与した。その結果、摂食量及び体重が増加し、解剖の結果、肝臓と脂肪組織の重量が増加していた。続いて、脂肪組織及び肝臓において、脂肪合成・分解酵素の遺伝子発現変動を解析した。その結果、脂肪組織では、脂肪合成酵素の発現が顕著に増加する一方で、分解酵素の発現は減少した。肝臓においては、脂肪酸化酵素の調節因子の発現が低下していた。 以上のことから、鳥類・ニワトリにおいて、NPGLは摂食行動を亢進し、脂肪を蓄積させる効果を持つことが示唆された。この脂肪蓄積効果は、哺乳類のラット・マウスにおいても同様にみられることから、NPGLの種を超えた普遍的作用である可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初生ヒナの慢性投与実験の確立には高い技術が必要とされるため、時間がかかると予想していたがが、ラットやマウスを用いた慢性投与実験を常に行っていたため、スムーズに対処することができたためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果からニワトリ・ヒナにおいてもNPGLは脂肪蓄積を促進することがわかった。この効果は、NPGLが担う生理機能であると思われる。ただし、ニワトリ・ヒナだけを用いた研究では、NPGLの生理的意義の全容解明は難しいと考ええている。そのため、他の鳥類も用い、NPGLの発現調節や生理機能解明を進めていく予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究計画よりも早期に研究が遂行したため、今年度に使用する研究費を少なくすることができた。そのため、次年度以降に必要な研究費に費やしたいと考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ニワトリ以外の鳥類を用いNPGLの生理機能解明を行う予定でいる。具体的にはスズメ目のキンカチョウを材料に用い、NPGLの前駆体遺伝子をクローニングし、発現部位に関して分子生物学及び形態学的解析を進める。さらに、エネルギー状態を変化させNPGLの発現変化を解析することで、NPGLの生理機能を解明したい。
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