研究課題/領域番号 |
16K07444
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
松本 顕 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (40229539)
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研究分担者 |
伊藤 太一 九州大学, 基幹教育院, 助教 (20769765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 概日リズム / ショウジョウバエ / 老化 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
米国のバイオインフォマティックスの専門家と本格的な共同研究体制をとることで、これまで保有していたRNAseqデータについて新方式の解析(RAIN法、Thaben and Westermark, 2014, J. Biol. Rhythms)を導入した。その結果、当初の予想を上回る関連遺伝子候補(行動への影響を今後解析するターゲットとなる遺伝子群)が同定された。また、ショウジョウバエの頭部全体を用いて行われた先行研究(Kuintzle et al., Nature, 2017)のデータを同基準で再解析し、脳だけをサンプルとした我々のデータと比較することで、発現組織の特異性(脳内とそれ以外=中枢と末梢)、週齢に伴う発現変化(発現量の変化の有無、概日変動の有無、発現位相の変化)といった多様なクライテリアから、それらの遺伝子群を分類することができた。さらに、各グループに関して、Gene Ontology解析を行ったところ、頭部全体をサンプルとして解析した場合に発現リズムが報告されていた遺伝子群の多くは、脳以外の組織(おそらく、ショウジョウバエ頭部における主要組織である複眼)由来であり、実際に視覚系の機能との関連性が有意であること、さらに、それらの遺伝子群は加齢による発現変化を受けにくいことが明らかになった。逆に、脳特異的に発現リズムを示す遺伝子群は、種類も限定的であり、また、発現量や発現位相、リズムの有無に関して加齢による影響を受けやすい一群の遺伝子が含まれていることが判った。これらが、本課題のメインターゲットである「加齢による断眠現象」のカギとなる遺伝子群であると予想される。一方で、脳でも末梢組織でも安定な概日振動を示す遺伝子群には、時計遺伝子や睡眠関連のものがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記述した通り、米国のバイオインフォマティックスの専門家と本格的な共同研究体制をとることで、これまでに得られていなかった詳細な解析結果が新規に得られた。この意味で「当初の計画以上に進展した」といえる。そこで、これらの結果を論文にまとめて、本研究課題に関する第1報として報告することを企図したが、年度内(正式な申請では本年度が最終年)には果たせなかった。このため期間延長の申請を行った。また、本年度の予算執行をできるだけ切り詰めることで、論文投稿にかかる費用などを来年度に回すことにした。来年度には論文受理を果たしたいと考えている。以上から、バイオインフォマティックス解析に関して総合的に判断すると、「おおむね順調に進展している」と評価するのがふさわしいと思われる。 バイオインフォマティックス解析の結果から、加齢に伴う睡眠相断片化の原因となる候補遺伝子が複数同定された。いずれも末梢組織で発現していない、あるいは、発現に概日リズムのない遺伝子だが、脳内では周期的に発現しており、さらに発現量などに加齢による影響がみられた遺伝子である。機能面からは、転写因子やチャネル、神経伝達物質関連の遺伝子が含まれていた。これらのいくつかに関してRNAiを用いた遺伝子ノックダウンを行い、行動への影響が生じることを確認した。それらの遺伝子は特定の神経回路でのみ発現するものではないため、前年度に取り組んだホルモン関連遺伝子に続き、本研究課題で当初予測していた「神経回路網の特定」に沿った結果とはならなかったが、遺伝子を特定できたことから、行動レベルでの研究も「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は本来ならば今年度が最終年であった。国際共同研究によるバイオインフォマティックス解析で予想外の進展がみられたため、その結果だけで本研究課題での第一報として論文報告することを企図したが、残念ながら本年度内には果たせなかった。それに伴う投稿費用も予想外に必要なことがわかったため、本年度の予算執行をできるだけ切り詰め、来年度に備えることにした。すでに期間延長申請が受理されているので、来年度には論文受理にこぎつけることを、今後の展開の第一目標としたい。 これと同時に、行動レベルでのスクリーニングを通して同定したいくつかのターゲット遺伝子についての解析を深めることも来年度の課題となる。また、バイオインフォマティックス解析を通してターゲット候補として抽出されてきたものの、スクリーニング未着手の遺伝子群についての解析を行うことも今後の課題である。これまでは、老齢個体で観察される睡眠相の断片化が、RNAiによる遺伝子発現のノックダウンによって、若齢個体でも誘発されるかを指標にスクリーニングを行って来たが、老齢個体でこれらの遺伝子を強制発現することによって、睡眠相の断片化が阻害されるかについても、今後あわせて調べる必要がある。 バイオインフォマティックス解析を通してターゲット候補として抽出されてきた遺伝子群のほぼ全ては、特定の神経回路網で特異的にはたらいているものではなかった。しかし、それらの中にはすでに睡眠との関連性が指摘されている遺伝子も含まれているため、まずはそれらから解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の共同研究者の協力を得て、新方式のバイオインフォマティックス解析を行った。興味深い結果が得られたため、本研究の第1報として論文発表を計画したが、期間内には論文受理に到らなかった。また、バイオインフォマティックス分野の雑誌の投稿料が思ったよりも高額であることが判ったため、投稿を計画している雑誌の投稿料を賄えるように、本年度の予算使用を切り詰めた。これに伴い、補助事業期間の延長申請を行った。 本研究課題の予算で第1報の成果発表まで賄って終了するため、次年度の予算(切り詰めて残した予算残額)は、論文校正費と論文投稿料にあてる計画である。
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